新型コロナ対応に見る日本的集団意思決定の考察

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考察

 今回の対応は、不明な要素が多い状況で、他国はワーストケースに備えた対応であり、日本は希望的観測的な前提に基づく対応であったと言えるでしょう。
日本的組織の意思決定の過程は次のようなものです。

・社会利益より組織利益(ナワバリ、既得権の保護)を常に優先する
・すべての制約条件(ナワバリ、既得権の保護)を盛り込み、お金も人員もかけない希望的観測に基づく、実現不可能な計画が作られる(ワーストケースに備えた思い切った対応ができない)
・一度作られた計画は、見直されることはない(どこまでも突き進む)
・なぜか計画通りに進んでしまい「大成功」で終わる
・事実について、検証されることもない 
・限界がくると破たんすることもあるが、誰も責任は取らない

このメカニズムについて考察すると

まず、なぜ他国はワーストケースに備えた対応を選択するのかについてですが、外国の人は、政府や国を信用していません。自分の身は自分で守ろうとします。
もし国が希望的観測で対応しようとした場合、そしてそれを押し通すためにPCR検査を受け付けないといった対応をしたとすると、一気に政府は破たんしてしまうでしょう。
一方、ワーストケースを想定して対応し、それでも多くの感染者と数万の死者を出しても、指導者が責められることがないはずです。現に、ニューヨーク市長など評価が上がっています。
だから、多くの国は、ワーストケースを想定した対応しかできせん。

 日本の場合ですが、もしワーストケースに対応して、諸外国と同じようにロックダウンして、PCR検査をしまくって、患者をホテルに隔離、医者の動員や人工呼吸器やマスク等の備品の緊急製造などの対応を取ったとしましょう。
 結果として、多くの感染者と、数万単位の死亡者が出た可能性が高いでしょう。
 正しく言えば、本当の被害数値が顕在化したはずです。
 そうなったら、国は、医療崩壊を招き数万の死者を出した対応について糾弾されたでしょう。

 もし、ワーストケースに対応して、隠蔽なしで本当に死亡者を低く抑えることに成功したとします。
 その場合、大げさな過剰対応により日本国内に経済的打撃を招いたとして糾弾されるでしょう。

 つまり、ワーストケースへの対応を選択した場合、どう転んでも、国は糾弾されてしまうのです。
 
 それならば、希望的観測で、お花畑的計画を実行し、ロックダウンもせず、なぜか「大成功」してしまうという伝統の必殺技を繰り出すしか選択肢がないのです。

 とりあえず「やってる感」を出してアピールだけして、実態は何もしない、都合の悪いデータは一切受け付けないという感じです。
 企業、行政など、全国津々浦々の日本的組織がそういう感じです。
 企業で言えば「会社は社員のもの」という言葉があるくらい株主軽視が激しく、行政についても組織利益優先です。
 根本の原因は、やっぱり年功序列の終身雇用という組織体系にあると思います。
 一生同じ組織で過ごし、代々、先輩が気に入った後輩に権力を譲り渡すという組織では、組織内が世界のすべてであり、組織を守ったものが出世するでしょう。
 日本が、世界経済が3倍に拡大する中で、30年間停滞を続けてきた要因です。

 今回のコロナパンデミック発生時、2月当初時点で、マスクが店頭から消えました。マスクや人工呼吸器など、日本企業がその気になれば3月くらいには、月産マスク何十億枚、人工呼吸器数万台くらいやれると思っていましたが、現実はそうはなりませんでした。
検査キット、マスクや人工呼吸器、患者受け入れ施設などのリソース不足に対して、迅速かつダイナミックな支援に乗り出した企業は、創業者社長のトップダウンの新興企業ばかりです。
 ものつくり日本を象徴していた一流メーカー企業は、何をしていたのでしょうか?

おわりに

 最後に、クラスター対策を作って実行した偉い学者さん達を弁護したいと思います。
 学者さん達は、当然、当初からワーストケースに対応した計画を実行するように要望していたはずです。
 クラスター対策は、事態発生最初期に、PCR検査能力や、人員などリソースが限られる中、緊急対応的に、一番効率のよい方法であるクラスター対策により何とか1か月くらい拡大を抑え込んで、時間を稼ぎ、その間に、ロックダウンに向けて、検査能力の急拡大、医者・人員の動員、隔離用ホテル等準備、人工呼吸器の増産などの対策を行うよう希望していたはずです。
 
 ところが、クラスター対策のみで、理論的にあり得ない効果を上げて見事に対応、4月中頃になって、まだドライブスルー方式の導入と隔離施設の準備を検討などといっているのです。

 偉い学者さん達は、内心は、上手く利用されたと思っているのではないでしょうか

 今回の対応が、日本の成功モデルとなってしまわないか心配です。

もし次に来るパンデミックが、本当に死亡率4%、基本再生産数が6程度であったら、同じやり方では国が破たんしてしまうでしょう。
 

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