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新型コロナ対応に見る日本的集団意思決定の考察

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日本の対策の前提が成り立っているのか

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 「再生産数2」と「国内で蔓延していない」、二つの前提が成立しない限り、クラスターつぶし作戦は成功しないでしょう。しかし、現実は成功したのです。
 では、その前提が成立したのか考えてみようと思います。
 
 基本再生産数ですが、2月時点で世界のニュースでは、1~6と言う幅広い意見がありました。
 新型コロナは、接触、飛沫、空気、糞便など様々な感染能力を持ち、物体表面で数日感染能力を保持できるとされています。
 ダイヤモンドプリンセス号で700人の陽性患者が出ましたが、1月20日横浜港を出港して、1か月もしないで、感染者(数人)→700人まで、陽性患者が増えたことになります。

 偽陰性や船内で感染し無症状で治癒してしまった人はPCR陽性にならないので実際の感染者は1000人は超えているのではないでしょうか?
 また、屋形船の一回の飲み会で集団感染が起きたり、正直な話、再生産数2という値は、ありえるのでしょうか。
 大都市のサラリーマンの多くは満員電車で、咳が出るのにマスクをしない馬鹿に、咳を吹きかけられながら、他人の手の脂でねっとりしたつり革にぶる下がって、押し合いへし合い、毎日何十分も我慢して通勤して、飲み会、会議など行っていますが、それは、クルーズ船内よりはるかに濃厚接触ではないのでしょうか?

 次に、国内での1月末の蔓延状況ですが、武漢からの政府チャーター便の帰国者の陽性率1.9%であり、一月時点の武漢周辺住民の少なくとも50人に一人は感染していたことになります。
1月の中国人の日本国内への旅行者数は90万人以上です。武漢周辺には、日本人も数万人居住しています。
 12月から武漢周辺で蔓延が始まっていたことを考えると、1月末の時点で日本国内に既にかなりの数の感染者が存在していた可能性が高いと思います。

 日本の対策の成功を握る前提は、成立していた可能性はあるのでしょうか?

その後の経過の考察

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希望的観測の前提条件を積み上げたクラスターつぶし戦略ですが、その前提が成立していない可能性が高いにも関わらず、他国に比べて表面的数値上は大成功しました。

 当初の目論見通り、帰国者(の陽性患者)と濃厚接触者から、感染者が多く見つかりました。

理由は当然、帰国者や濃厚接触者しか検査してくれないからです。
例えば東京都で言えば、新型コロナ相談センターや、コールセンターに毎日数千人の相談があっても、実際の検査数は、一日、数十、多くて数百で、それもクラスターつぶしで濃厚接触者の検査も入っているとしたら、実際の相談者はほとんど検査してもらえない状況になったのでしょう。一説には、検査にたどり着けるのは相談者の1%という話もあるようです。
 
 行政は自由に感染者数をコントロールできました。東京都で言えば50人検査して陽性25人だったところを、緊急事態宣言を出そうと思ったら、検査数を200人に増やして陽性患者一日100人で、500人検査して陽性200人と、検査数を増やしていけばよいのです。
じゃあ相談者3000人を全部調べたら、一日に何人の陽性患者がいるのか興味深いところです。

次ページ「4月中旬での状況」へ続く