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新型コロナ対応に見る日本的集団意思決定の考察

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 新型コロナパンデミックによる諸政策の意思決定過程は、各国の差が現れて本当に興味深いものがあります。
 特に日本が他国との違う対応を示している点、日本的集団意思決定が顕著に表れていると感じています。
 日本的集団意思決定の考察について書こうと思います。

 この記事は、2020年4月中旬に書いています。その時点の状況で書いている点、予めご了承ください。
特定の政党、政策を批判する意味、政治的な意図は、全くありません。

新型コロナ発生当初(1月時点の情報)

 12月下旬から、武漢で謎の肺炎が急増という話が出ていたと思います。
 1月初旬~中旬位になってかなりの騒ぎになっていて、対岸の火事だったものが帰国者より国内感染者が見つかって、さらに1月末にダイヤモンドプリンセス号がやってきて、国内でも感染者が見つかり出して、という感じで騒ぎが広まっていました。
 1月末時点で武漢での感染者死亡率4%という値が出回っていました。基本再生産数については、WHOの「ヒトからヒトに次々に感染する証拠はない」というものから、基本再生産数6という推定値もあり、正体不明でした。
 ワーストケースで考えると、スペイン風邪(死亡率が2%)の死亡率も感染力も二倍ということで、とんでもないパンデミックの可能性があったわけです。
 

新型コロナ対応の違い

 1月末での情報を受けて、各国で国内感染者が出てきた段階での対応ですが、武漢の死亡率4%という発表数値は、信ぴょう性に乏しく、意図的に死亡率を高く発表していた臭い感じがします。※意図は各自推察してくださいね

 ただ、否定も肯定もする材料がない中で、多くの国はワーストケースに備えた戦略を取りました。

 具体的には、ロックダウンして、PCR検査数を増やして、患者を隔離するという戦略を取りました。
 結果として、医療機関のリソースがパンクして、先進国でありながら数万単位の多くの死者を出す国も出ています。

 一方、日本は、ロックダウンせず、PCR検査対象を厳選し、絞って、クラスターを見つけ出し、クラスターをつぶすという戦略を取りました。
 新型コロナ対応における諸外国との大きな違いは、PCR検査数に表れており、人口比的に検査数は、諸外国の数百分の一です。
 その成績は、4月22日時点厚労省データで、日本国内のPCR検査数130587件 、陽性11496人、死亡者277人
という結果で、ロックダウンをしても多くの感染者と数万の死者が出ている諸外国に比べて、コロナ対応としては大成功、世界の奇跡といってもよいでしょう。

さて、日本のクラスターつぶし作戦が成功する前提として、二月頭の時点では以下のように考えていたはずです。
 ・基本再生産数が2以下 感染力は、感染者一人から二人程度に感染
 ・まだ国内では蔓延していない、これから外国から入って来る

 作戦のロジックとしては、再生産数が2であれば、本当に身近な人間、よほどの濃厚接触でないと感染しないはずです。
 国内では蔓延していないはずなので、まず、外国からの帰国者から陽性患者を見つける。
 感染者が見つかれば、その周辺者(濃厚接触者)を調査して、クラスターをつぶすことで、パンデミックを制圧できるでしょう。
 
しかし、「再生産数2」と「国内で蔓延していない」、二つの前提が成立しない限り、クラスターつぶしは無意味です。
 もし、満員電車でも簡単に感染するなら、濃厚接触者など探しようがありません。

次ページ「日本の対策の前提が成り立っているのか」へ続く