ベーシックインカムは実現してしまう件

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財源的可能性の検証


 ベーシックインカムを語る時に、必ず出て来るのが「財源はどうするんだ」問題です。そこで、ベーシックインカム導入が財源的に可能か検証してみます。

1.ベーシックインカム導入に必要な年間予算額

一人当たりの月の支給額と、必要な年間予算額が下記の通りとなります。

毎月1万円(年12万):9.8兆円

毎月2万円(年24万):19.5兆円

毎月3万円(年36万):29.3兆円

毎月5万円(年60万):48.8兆円

必要予算額の計算式:支給対象者数(8,134万人)×年間支給金額

支給対象者数:総人口(1億2,600万人) -公的年金受給者(4,077万人)-生活保護受給世帯人口(389万人)=8,134万人

※実際は全国民に一階部分としてベーシックインカムを支給し、公的年金と生活保護受給者は、ベーシックインカム需給分の年金等受取額が減少する運用になるはずです。財政の可能性を検証するため便宜上、控除して計算します。(全体の収支は合います)

毎月1万円の支給が予算10兆円で可能であれば、導入できそうな気がしませんか?

2.財源可能性の基礎データ

日本の基礎データを下記に整理します。

実質GDP:535兆円(2019年)

地下経済規模:60兆円(税収換算17兆円)諸説あり

総財政支出:約231兆円(国と地方財政合計)

国の総支出:151兆円(一般会計と特別会計の合計(重複、国債償還除く)h30予算)

地方財政総支出:80兆円(地方交付金除く)

国の労働力人口:5,660万人(内、非正規2,165万)、フリーランス人口(300~1200万)諸説あり

公務員数:332万人(国58万人、地方274万人)

上記の基礎データから財源の可能性を探ることになります。
 考察すると、公的な財政総支出は日本のGDPの半分近くあり、従って国の労働人口の半分近くは、財源は税金である公的事業に関する仕事を行っている可能性があるということです。

また、財源に関する議論で必ず「公務員の給与一律カットすれば足りる論」が出て来ますが、公務員総数332万人、人件費総額は、福利厚生を見ても最大限30兆円程度、仮に一律10%人件費カットしても財源3兆円確保に過ぎず、総支出230兆円の1.3%です。反対の大きさや、モラル・モチベーションの低下を考えると、ナンセンスと言えそうです。

予めその論は、除外します。

3.財源可能性候補

財源可能性としては、「税収増によるもの」、「効率化により生み出すもの」、「事業の縮小、統廃合により生み出すもの」の3パターンに分けられます。

(1)税収増による財源候補(財源可能性:21兆円)

①所得税控除、児童手当の見直し  5.6兆円

一律でベーシックインカム(国民手当)を国民に支給することで、所得税控除(基礎、扶養、配偶者控除等)、児童手当等を見直し、ベーシックインカムに一本化が可能です。
 配偶者控除等を見直し、国民手当で支給すれば「働くほど得する社会」になり女性の社会進出が進みます。
 徴税のシンプル化(コスト削減)、単身者との税負担の公正化にもつながります。

控除見直しの税収増効果は資料がなし、年金・生活保護受給者を除いた人口8000万人×5万円と想定すると、4兆円くらい? 児童手当1.6兆円、合計で5.6兆円くらいと想定

②消費増税(5%) 10兆円

消費税1%で約2兆円の税収増効果、5%増税時、10兆円の増収
 

③地下経済の税収化 5.7兆円

地下経済規模:60兆円(税収換算17兆円)諸説あり、実態は誰にも分からない

※必ずしも非合法ではない租税回避地等の利用を含む
 法人、国民番号と全口座との紐づけ、フィンテック技術を活用し、全体のお金の流れの見える化などにより実体経済化
 17兆円の1/3を税収化したとして5.7兆円

税収増可能性 総合計:21.3兆円→21兆円
 

(2)運営効率化による財源確保(財源可能性:20兆円)

 行政等の運営効率化というと、「民間の仕事は大変なんだ」「公務員はもっと働け」などと言う人が必ず出て来ます。ここでの議論は、国と地方の総財政支出230兆円の運営を効果は落とさず、効率化(コスト削減)して、財源確保をすることが目標です。

230兆円は、GDPの半分近くに及び、支出は、全国の民間企業や個人に行き渡ることなります。
 財源を確保するには、行政内のみの話にとどまらず、公的事業の受注者である民間企業を含めた全産業レベルでの運営の効率化が必要になります。

具体的には、行政、民間企業を含む全産業のジョブ型雇用への転換、RPA(AIによる業務自動化)の導入、テレワークの推進、ギグワーク、フリーランスの活用、人材流動性の向上などが必要になります。
 
 さらに、電子政府・手続きオンライン化、国民カード(顔、指紋認証)による年金、健康保険、運転免許、銀行通帳等の統合が必要になるでしょう。
 日本人一人当たりの労働生産性は、アメリカの61%、ドイツの77%(2018データ)しかありません。まだまだ効率化の余地があるはずです。
 財源可能性:総支出230兆円の10%で23兆円 →20兆円と仮定

(3)事業の縮小統廃合によるもの(財源可能性:4兆円)

国の総支出151兆円の内、社会保障、防衛、教育、公共事業などの国民の安全・安心のため削減不可能な部分を除いた部分は、43.9兆円です。
※内訳:地方交付金19.1兆円、その他24.8兆円(補助金、給付金特別会計および財投12.6兆円)h29
 これらは、ある程度は、費用対効果等を対比しながら、事業の縮小、統廃合等を行って財源を捻出できる可能性があります。
 財源可能性:43.9兆円の10%として4兆円想定

(4)結論


税収増による財源可能性:21兆円
運営効率化による財源可能性:20兆円
事業の縮小統廃合による財源可能性:4兆円
総合計:45兆円

 ベーシックインカムに必要な予算(以下)と比較すると、支給月額1~3万くらいまでなら、現状の社会保障、防衛、教育、インフラ投資を縮小しなくても、ベーシックインカムの財源確保は、実現可能性があるでしょう。


 毎月1万円(年12万):9.8兆円 (すぐにでもできるはず)
 毎月2万円(年24万):19.5兆円
 毎月3万円(年36万):29.3兆円
 毎月5万円(年60万):48.8兆円(不可能)

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