中小企業診断士に特化した人材紹介業について

 中小企業診断士に特化した人材紹介業者は、探した限り存在しないみたいです。
 何年か前に、中小企業診断士に特化した人材紹介業者のホームページをみたような記憶があるのですが、現在は、みつかりません。

 私自身は、建設技術者に特化した人材紹介業を運営しているのですが、中小企業診断士に特化した人材紹介業は、過去に迷ったものの、手を付けていません。
 中小企業診断士に特化した人材紹介業が成り立つのか、可能性を考察してみます。

市場規模


 人材紹介の対象となる中小企業診断士はどのくらいいるのか予測してみます。

 中小企業診断士は、3万人の資格登録者がいて、既に独立している人(1万人)を控除し、さらに高齢層(60代以上)を控除して、企業内診断士1万人程度と推定できます。
 企業内診断士1万人の内、公的分野、安定した産業の大企業等を除くと、人材紹介の可能性のある診断士は5000人位と想定できます。
 5000人の内、毎年の転職者250人位(20人に一人)が人材紹介可能性のある現役レベルで転職する中小企業診断士の数です。年間わずか250人程度です。

どの位の求職登録者を確保できるか(競合状況)


 人材紹介可能性のある中小企業診断士の転職者(250人)の内、知人の誘い、直接応募等で転職活動する人を除くと、実際に人材紹介業者を利用するのは、最大限で100人程度かと想定されます。
 さて、そこから、テレビCMをやっているような各大手の人材紹介業者、その他、無数の中小業者との競合があります。
 ただ、現在、中小企業診断士特化した業者がないので、SEO的には、「中小企業診断士 転職」等で上位に行けると思います。また、中小企業診断士自身がエージェントになりキャリア相談する点で、強みは発揮しやすいと思います。
 よって、100人という僅かな人材紹介利用者の内、求職登録者は、頑張れば20人程度、そこから転職成功し成約に至るのは0~5人程度と想定します。(きびしい~)
 売上は0~数百万位で、利益は、あまり残りません。赤字の可能性も高いと思います。
※一切合切すべてを一人でやれる人は、成功すれば、なんとか食えるかもしれません。

その他、懸念される事項


①求人開拓の困難さ 

 ミドル層向け人材紹介は既に競争過多であり、その辺に転がっているマネジメント求人を並べても、他社と差別化は難しいです。
 「中小企業診断士」に特化した、エッジの利いた求人を揃えたいところですが、かなりの困難さを予測します。

②求職者対応の困難さ

 求職者登録の現実として、「紹介可能性のない人」、「転職する気がない人」「中小企業診断士を持っていない人」も多数登録してきます。実際の求職登録者は年間50人以上になる可能性があります。
 それぞれの人に、真摯に対応して、可能性を追求したとしたら、大変な時間を取られてしまうでしょう。
 「中小企業診断士に特化した求人」は、年棒制、年間契約等の「ハイリスク求人」が多くなるはずです。
しかし、「俺は世界の○○社の部長だ」「社員100人の子会社の社長だ」みたいな万能感にあふれた横柄な人や、若手でも自己評価マックスの意識高い系の人も来ると思うのです。
 そして、職務が、役職は、部下は、有給は、福利厚生は、財形は、定年年齢は、退職金は、と細々と雇用条件にこだわりだして、面談等して、散々引っ張った後に、最後に「やっぱりリスクがあるから」とか「家族が反対するので」とか言い出してドタキャンされて、苦労するような気がしています。

③地銀、助成金、官営ビジネス

 今後、地方再生やら、中小企業再生やらで、大都市から地方へマネジメント人材を紹介する動きが、官主導で活発化していくでしょう。
 現在、地銀が人材紹介業に乗り出しています。官営のものもあります。
 採用企業は、人件費の助成金やらたっぷり貰って、紹介料は無料みたいなものが、ますます増えます。
 さらに官民ファンドからの出資と人材紹介なんてものまで出て来ました。
 GDPの半分は、元を辿れば税的なものなのだから、公共事業にぶる下がる政商が儲かります。大手の人材紹介やМ&A仲介業者は、丸儲けでしょう。診断士の補助金コンサルなんて可愛いものです。
 
 個人的には、人材採用コストが無料な上に、人件費の助成金を貰えなければ、マネジメント人材を採用しない企業なんて、どれほど優秀な人材が入っても意味がないと思うのです。
 また、人材に正当な対価(報酬)を払わない企業が、入社後、ご紹介者を大切に扱うことも考えにくいです。
 
 現実問題として、中小企業診断士特化の人材紹介をやろうと思えば、官主導の無料、助成金、補助金ビジネスによる民業圧迫を大きく受けると思います。
 


それでも中小企業診断士特化の紹介業の可能性とメリットはあるか


 以上に、中小企業診断診断士に特化した人材紹介業の可能性を考えてみましたが、普通にやった場合は、苦労ばかりで、採算の可能性が低い、というのが個人的な見解です。

 ところが、それでも「ビジネスとして成立する可能性」は、あると思っています。
 以下に解説します。

(1)ビジネスとして成立する可能性


 「中小企業診断士」に特化した人材紹介業が成立しない原因は、一つは、日本企業は、経験主義で「マネジメントの価値」を理解していないことです。そのため経営幹部を外部から迎える文化がなく、役職は滅私奉公の功労賞として機能しています。
せいぜい取引先金融機関か大口顧客のOBを受け入れるくらいです。これも便宜目的であって、マネジメント人材を目的としていません。
 経営コンサルタントのニーズは、もっとありません。マネジメント価値を認めていない上に、提案されても実行段階でつまずく企業が大部分だからです。

 しかし、経営マネジメントの価値を理解している企業経営者もある程度はいます。
 よって、会社に来て、提案だけでなく、実行段階、「主体的に手を動かして計画から実行、定着まで一式やります」「会社の利益を増大します」という人材であれば、それなりに需要はあると思います。
 ところが人材需要があっても、管理職、年収800万などという中途採用をできる中小企業は、ほぼ無いと思います。
組織文化的に受け入れられませんし、制度的に正規雇用自体が、大きなリスクだからです。

 そこで、「契約社員(3か月試用期間)、週2日、年収300万(固定)」という形の雇用形態であれば、潜在的なマネジメント人材需要を「求人」という形で顕在化できる可能性はあります。
 雇用のリスクを限定し、金額もスケールダウンすることで、ニーズを顕在化するわけです。
 
 一方で、時代の追い風があります。「複業、ダブルワークの解禁」、「リモートワーク普及」の流れです。
 週1~2日程度、「リモートワーク可」であれば、現状の企業内診断士1万人も、潜在的な人材紹介可能性の候補になり得ます。
さらに、独立している診断士1万人も、人材紹介可能性候補になります。支援機関に週数日勤務する募集に多くの応募があることからも、週二日、年収300万のマネジメント人材としての求人に魅力を感じる人は多いでしょう。
この場合、年間100人以上の求職登録者がある可能性もあります。

 以上のように「契約社員、週2日、年収300万」といったマネジメント求人の開拓と、求職者(中小企業診断士)をマッチングすれば、ビジネスとして成立する可能性はあります。

 勘違いしてはいけないのは、経営コンサルタント紹介でも、経営顧問紹介、副業・フリーランス紹介でもないことです。
 こうしたものは、既に多くのものが存在し、診断士協会でも無料で紹介しています。
 
 可能性を感じているのは、契約社員として働く中小企業診断士を紹介することです。
 事前にコンサル仕様を決めるのではなく、週二日、年収300万で雇用し、社員として、社内で経営実務を行う人材を紹介することです。
 経営分析、計画~実行までの、現場の泥臭い部分も実際に手を動かして行う人材です。役に立たなければ、契約期間終了で解雇です。
 この点を、求職者が事前に周知していないと、「経営指導だけして、実務・作業のできない人材」、「偉そうで横柄な人材」等のトラブル、クレームに、悩まされることになるでしょう。

 
(2)その他のメリット


 人材紹介業を行う大きなメリットは、情報量とネットワークが飛躍的に増えることにあります。
 もし、「中小企業診断士に特化した人材紹介業」を始めた場合、数年で数百人の中小企業診断士(企業内、独立)の求職者データと、人的ネットワークができます。経歴・レジメ、やりたいこと、得意分野まで詳細に把握して、経営実務を行う意思のある人達です。
 次に、マネジメント人材の価値を認め、外部から実務を行う中小企業診断士を雇用する。成果に対して正当な報酬を支払う、企業とのネットワークが増えます。
 公的支援、補助金、助成金に頼らず、自力で何とかする意思をもった経営者・企業です。
 こうした情報とネットワークは、お金を出しても決して手に入らない無形資産です。
 なぜなら、こうした人や企業の、困っていることや要望が、どんどん入ってくるわけですから、あとはどうすればよいか分かりますね。

次ページへ続く