ベーシックインカムは実現してしまう件

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ベーシックインカム論の妥当性評価

 以下の3つの観点で評価します。

  • 長期的な視点で、メリット、デメリットを比較
  • 公共事情の他の手法との比較
  • 海外での実証実験等の考察

 1.ベーシックインカムのメリット・デメリットの評価 


 (1)ベーシックインカムのデメリット

懸念される中で一番多いのが、「お金を貰ってしまったら働かない」、「社会が滅茶苦茶になる」という意見です。
 個人的には、この懸念は、十分に考えられると思います。
ベーシックインカム論でよくあるのが、国(行政)のセーフティネット(医療保険、社会保障制度、教育等)をやめて、代わりに現金で支給するという考えががあります。お金で渡して、後は自己責任という発想です。
 その場合、一人月10万円などの金額が出て来ます。
 この金額では、例えば「5人家族」または「5人の集団生活」で月50万円にもなります。すると、モラルもなく遊興にふける退廃的な層が出て来ると思います。納税側で貢献することもなく、社会インフラにフリーライドする層が増大すれば、税収が減少し、納税者の負担は増えることになります。
その場合、深刻な社会分断や、治安の悪化等の社会問題が引き起こされるでしょう。

このような極論的なベーシックインカム論は、論外だと思いますし、実現性はないでしょう。
 生活できてしまう金額レベルのベーシックインカムは、妥当性がありません。
ベーシックインカムのデメリットが生じるか否かは、「支給金額」の問題なのです。支給金額が大きいほど、財源を確保するために他の社会サービスを縮小せざるを得ませんし、納税・労働を放棄する層が増えます。
 ベーシックインカムで妥当性のある金額は、上記の大きなデメリットが生じない範囲、生命維持の最低限レベルのセーフティネットとして、金額にして月1万~3万円くらい最大限5万円程度の範囲と推測します。
 

(2)ベーシックインカムのメリット

 労働放棄等の大きなデメリットが生じないレベル、「一人月3万円支給のベーシックインカムを導入したケース」を想定してメリットを以下に考えてみます。
 

①国民の生活・将来不安が大きく減少する(決して漏れないセーフティネット、命綱になる)

単身者支給額は、月3万円、年間36万円、10年で360万円、20年で720万円になります。
 5人家族で月15万円、年間180万円、10年で1800万円、20年で3600万円の支給受取額になります。
月3万の支給でも、これだけの所得増の効果があります。
予期せぬ事態で給与等の収入ゼロになっても、路頭に迷う可能性は低くなり生活・将来不安が、かなり軽減するでしょう。

②生活のための労働が減少し、自己実現のための労働が増える

ベーシックインカムにより生活不安が減少することで、低生産性のブラック企業にしがみつく動機が減少します。
企業では、労働者を大切にしないと従業員を集められない状況が生まれ、産業構造全体の変化に繋がります(高付加価値産業への移行、企業のホワイト化)。さらに、国民の時間・経済的余裕が増える分、将来の利益増大への自己投資的な活動も増加し、労働者の質が上昇していきます。(労働者の高付加価値化)

③生活不安が減少することで挑戦する人が増える(社会・経済の発展に繋がる)

転落の危険がある場所に行くときに、命綱があれば安心して挑戦できるでしょう。
 例えば、5人世帯で月15万円のベーシックインカムがあれば、これまで組織に依存せざる得なかった、気力・体力十分な、30代40代の家族持ち世代の転職や起業独立が増えます。その中には、地方を拠点に何かに挑戦する人も数多くいるでしょう。
 起業、転職、地方移住等の人材の流動性が向上し、適材適所が推進され、幸福度が増大します。
挑戦する人が増えることで、日本経済および地方の活性化、発展に繋がります。

④出生率の増大、少子化対策になる

経済的な理由により、結婚や出産を思いとどまる人が減少します。
 現状、低所得層(男性)の未婚率は極端に高く、深刻です。

一人月3万のベーシックインカム導入で、低所得層(年収200万)同士の夫婦共働き(子供3人)の場合、
世帯の総収入は580万円になり、十分に生活が可能になります。
※年間総収入580万:世帯所得400万(年収200万×2人)+180万(5人分のベーシックインカム)

※配偶者控除等はベーシックインカムに一本化され女性の社会進出が進むはずです。

⑤社会保障から漏れた人を救うことができる

ホームレス(路上・車上生活、ネットカフェ難民等)や住所不定無職者等の社会保障から漏れた人達は、実際に何万人存在するのか誰も分かりません。
※こういう人達は、決して好きでその状態になっているのではありません。
 住所不定でも、国民カードや本人認証(顔、指紋など)ができれば、ベーシックインカムが受け取れるはずです。
 こうした人達に、月3万の収入があれば、現状よりはずっとましな状況になるはずです。

⓺国民の社会貢献意欲が高まる(反社会的な人が減る)

現状、国民は、社会インフラを使い、教育や医療など様々な社会サービスを受けています。それらはすべて税金等で行われています。所得税の納税シェアは諸説ありますが、上位10%所得者が大部分(80%近く)の所得税を負担しています。

一方、平均所得以下層の納税シェアは、少ない(10%代)です。地方税や社会保険についても同様の傾向だと推測します。

しかし、平均所得以下層で、社会サービスの恩恵の実感がない人が多いと思います。逆に自分達は、国や企業に搾取されていると考えている人も多いと思います。貧困や搾取を理由に反社会的な思想、行為を正当化する人達もいます。

現状で困窮し、生活不安も大きい人は、そういう感情になることはある程度仕方がないことかもしれません。

こんな時、一人月3万のベーシックインカムが支給されれば、「国が国民を守っている」強い意志を感じることができるでしょう。
 結果として、反社会的志向は減少し、社会貢献意欲が高まると思います。

以上にメリットを網羅的に挙げてみましたが、一人月3万のベーシックインカム導入により、国民の生活不安や社会不安が軽減し、生活のためにブラック企業に留まる人が減少し、自己投資(資格取得など)が盛んになります。
 結果、有能で気力体力十分な30代40代世代で転職や起業などの挑戦をする人が増えて、経済が活性化し、地方を含む社会全体に活気が増えるでしょう。(今より、挑戦できる社会になります)
 さらに、未婚率が減少し出世率も増えて、少子高齢化対策になるばかりか、消費も活発化します。
 そして、住所不定で、社会保障、セーフティネットから漏れた人達を救うこともできる。
 反社会的な人が減少し、社会貢献意欲が高まる。

良い事尽くめです。

事業の社会的効果というのは、「直接効果」と「間接効果」に分けられますが、ベーシンクインカムは、「絶対に切れない命綱」であり、人々の生活不安を軽減し、「挑戦できる社会」にすることで、少子化、経済効果等に、膨大な間接効果が見込めます。
 一人月3万程度のベーシックインカムのデメリットとメリットを比較した場合、圧倒的にメリットの方が大きいというのが、個人的な見解です。

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