不況時は独立のタイミングとしては良い

 昔から「天の時、地の利、人の和」と言うくらいですから、独立など挑戦のタイミングは、成功のための三要素の一つと言えます。

(こちらの記事も参考にどうぞ。“独立して成功できるかは「運」って知ってました?”)

 私の場合、中小企業診断士合格後、忙しくて実務補習を受けられず、まず独立のために会社を辞めて、それから実務補習を受けたのですが、これから独立という実務補習中の2008年9月にリーマンショックが来てしまいました。
 その時は「もう会社辞めてるよ~」という感じで、もうどうにもなりませんので、世界不況と同時に独立する羽目になりました。
 当時の診断士業界の需給的なもので言えば、若手診断士の独立開業ブームでもあり、新人にとって厳しい状況にあったのかもしれません。

 実務補習中からプロコン塾や診断士協会の研究会に参加して種まきをしており、「独立したら仕事出すよ」的なことを言ってくれる人もいましたが、実際に独立したら「まったく仕事が無い」状態になりました。
 
 当時、周りの診断士からも「仕事がない」的話はよく聞いていましたし、ベテランから「昔は仕事が一杯あった」的な話も聞いていました。
 最初の半年はほぼ無収入でした。
独立後三年間は、家計はぎりぎりで、3年目など年収200万に届かなかったくらいです。

 では、不況時は独立のタイミングとしてどうかと言う点ですが
 個人的には、好景気時より不況時の方が独立のタイミングとしては、優れていると思います。

 その理由は、不況時の方がチャンスがあるからです。
 「お前の実体験と矛盾しているだろ」と突っ込みを入れている人が多いと思います。
 どう考えても、不況の時の方が、需給バランスが供給過多の状態で新人にチャンスがないと感じるでしょう。
 これは、経済ニュースも見て、マクロ経済がすべての事象に当てはまるように感じてしまい、行動心理に影響を与えてしまう例で、一種の認知バイアスだと思います。

 まず、好景気時を考えてみましょう。その状況は多くの企業が、それなりに上手くいっています。
 既存のやり方で機能して回っている状況というのは、大きな勝ち負けは決まりにくいものです。
 また、好景気の時は、実は人材の流動性もあまり高くありません。
 特に社内で評価されている優秀な人材は辞める動機がありません。
 よって、好景気時は企業・人がダイナミックな動きを起こす動機がなく、社会構造の変動が少ない状況です。
 そのため、新しいビジネスチャンスや、新人にチャンスが巡ってくる機会も少ないです。

 次に不況時を考えてみます。
 不況(特に世界不況)というのは何らかの大きな外部リスクによって生じます。
 そうした、外部リスクに対応するために、社会構造は変化を強いられます。

 「時代の流れ」とは言いますが、その流れは一定ではなく、不況時ほど時代が速く大きく流れます。
  時代の流れ、新たなニーズを読んで、事前に対応していた企業は、不況時にここぞとばかりに伸ばしていくことができますが、既存のやり方にこだわり変化を拒んで来た企業は、苦境に陥ることになるでしょう。
 しかし、苦境に陥ってからですら多くの企業は、希望的観測にすがって既存のやり方を変えることはありせん。人間しばらくは、我慢しますが、やがてそうした企業からは人が逃げ出しはじめます。人間関係、収入、不毛感のトリプルパンチで我慢の限界を突破してしまうからです。
 不況時は、優秀な人材から辞めていきます。自分に自信のない人は、会社にしがみつきます。
それにより、ダメな企業はどんどんダメになり、伸ばす企業は人材を獲得してさらに伸びていきます。
 つまり、不況時ほど明暗が大きな社会になります。創造も破壊も大きな状態になります。
 不況時は、チャンスはあるところには、いくらでもあり、無いところでいくら探しても見つかりません。

 私が、独立して3年間、ダメダメだった理由としては、主体性がなく、「誰から仕事を貰おう」とフラフラしていたからです。既存のやり方で仕事をしている「需要のないところ」に群がって、一生懸命、仕事を貰おうとしていたからです。
 
 不況の時に独立する人の注意点は、既存のやり方の延長でビジネスをやろうとしてはダメです。
 「一流企業での長年の実績と経験により経営コンサルティングをします」なんて人は上手く行かないでしょう。
新しい社会構造への変化に必要なこと、新しいニーズをとらえたビジネスをやる必要があります。
 まずは、そのニーズをとらえる嗅覚を磨く必要がありますが、嗅覚を磨くには、主体性をもって自分で考えて行動することが大切ですが、そのためには自分でリスクを負って独立してみるのが一番、手っ取り早いと思います。

(こちらの記事も参考にどうぞ。「主体的に動くのは難しい」)

 嗅覚を働かせながら、いろいろ試行錯誤するのです。
 私の場合、独立3年目に「ビジネスは顧客ニーズに価値を提供して報酬を受けとる」という当たり前のことを心底痛感し、覚悟を決めたのですが、経験・実績やら小賢しい理論やらは、あまり関係なく「顧客に価値を提供することを、自分で考えてやりたいようにやればいいのだな」と気が付いて、心が解放された気がしました。

 もう一つ、不況時が独立に有利な点は、競合が少ないことにあります。
 不況時には、人間心理として、しばらく様子見したい気持ちが働きます。そのため独立というような大きな挑戦の場合、競合が少なくなるのが普通です。
 新たなニーズで、競合も少ない秘密のスポットを見つけられればしめたものです。

 また、中小企業診断士的な仕事に限って言えば、不況時は、補正予算等で公的な企業支援が活発化します。
 新人にとっては、公的支援機関関連に食い込むチャンスが増えます。
 私の独立時も、緊急セーフティーネット貸付等の役所での審査窓口業務、日当二万、みたいな話を、診断士仲間から声をかけてもらったことがあります。やりませんでしたが。
 (どうせ3年もふらふらしているなら「経験」としてやっておけばよかったかな~と少し後悔)

 長期的にみても、不況時に独立して、社会構造の変化に合わせた新たなニーズをとらえた分野で、仕事をしていれば、好景気になった時に、さらにどんどん伸ばしていくことができるでしょう。
 逆に、好景気の時に独立して、既存のビジネスの延長の仕事をしていた人は、景気の良い間は大丈夫でしょうが、不況になった時に、厳しい状況に陥る可能性もあります。

おわりに

 まとめると、不況時は、独立のタイミングとして悪くないです。
 リーマンショックと比べても新型コロナによる不況は、桁違いのレベルですが、不況の度合いが大きいほど、ダイナミックな社会構造変化による新たなニーズが芽生えているのでチャンスはあります。逆にチャンスはないところにはありませんので、それを見つける嗅覚と行動力が重要になります。
 
 また、「独立のタイミングを計る。時期を待つ」というのは意味がないです。
 個人の人生で使える時間は、景気に関係なく毎年減少していきます。
 不況だろうが好景気だろうが、独立しようと思ったら、なるべく早く独立した方がよいでしょう。

 世の中は、不況も好景気もありますので、流れを読んで、常に新しいニーズ把握に努めることが重要です。
 
 ご参考になれば幸いです。