「中小企業診断士」と検索すると、関連キーワード候補に、「中小企業診断士 意味ない」、「中小企業診断士 役に立たない」と言ったネガティブなキーワードが結構出て来ることから、みんなが気になる事なのでしょう。
ビジネスパーソンの取りたい資格ナンバーワンと言われながらも、ネット上では、低評価や辛辣なコメントもかなり見られる状況です。
外部の人から見ると、他の国家資格に比べて、有資格者数も少なく、また独立している比率も低く、さらに独占業務がなく独立している人がどうやって稼いでいるのかも良く分からないと思います。
私自身も、他の診断士がどうやって稼いでいるのか良く分かないケースも多いです。「○○をやっています」までは、話してくれても、診断士同士でも具体的な稼ぎ処って話してくれない人が多いです。
ビジネスパーソンの取りたい資格ナンバーワンなのに、実態が謎という面白い資格です。
ここで中小企業診断士に対する低評価を考察してみたいと思います。
低評価のパターンですが、
第一に他の独占業務を持った士業の人からの評価です。
独占業務がある士業は、業法というものがあって、独占業務を行う上で、資格を名称表示しなければなりませんし、いろいろと責任や制約があります。大体が資格を前面に掲げて、仕事をしています。
ところが中小企業診断士というのは、業法もなく、名称表示の義務もない上に、他の士業のナワバリとしている業務の周辺、グレーゾーンの部分に踏み込んでくることも多く、よく思っていない人もいます。
そういう人から見れば、「いまいましい、怪しげなやつ」という印象を持っても仕方がないと思います。
「自宅兼事務所?→独占業務もないし絶対に食えてないだろう!」と脳内変換してしまいます。
第二に、カリスマコンサルタントや起業成功者と呼ばれるような人達からの評価です。
独立した中小企業診断士は、公的支援機関を中心に動いている人も多いと思います。この時、支援を受ける企業は「ほぼ無料」であり、診断士の報酬は支援機関、皆さんの納めた税金から支払われます。
実力で直接受注しているコンサルタントや、自分でリスクを取って起業し成功している人から見ると、サラリーマンが診断士を取得して独立し、公的支援機関に頼って、税金にぶら下がって、顧客に対して「ほぼ無料コンサル」をやっている人、そういう人が「プロコンです」と名乗っていたら、面白くないと思います。あ
これもある程度は仕方がないと思います。
ただ、逆説的に考えれば、未経験の一サラリーマンが資格を取っただけで、独立して、大したリスクを負わずに食べていけるなら、おいしい資格と言えるかもしれません。
第三に一般人の評価です。
私が独立する時に、「中小企業診断士なんて仕事のできない○○さんでも持っている」「独立できるような資格ではない」という意味ことを、全く別の3方面から言われました。
大企業等に居れば、身近な中小企業診断士といえば、社内の資格保有者だと思います。
その中で、評判が良くない人もいるのでしょう。経営用語を振り回して煙たがられるているのかもしれません。
これも仕方がないですね。
また、「中小企業診断士で有名人がいない」というのもあります。
経済人として有名になるには、大企業で出世して経営トップ、ベンチャー等でプロ経営人材として実績、自ら起業して成功、プロコンサルタントで成功、みたいな感じが考えらますが、これら全部、中小企業診断士と関係なく、仮に資格を保有していても、他の士業と異なり、資格を前面に出すことはないでしょう。
この中で唯一、年功序列的な大企業の幹部クラスには、診断士保有者が結構いると思いますが、大企業の社長が「○○社代表取締役(中小企業診断士)」と自己紹介するわけがありません。メリットがないでしょう。
また、起業家やプロ経営人材など、20代から主体性があってリスクを取って行動している人は、最初から診断士を狙わないでしょう。
低評価のパターンを挙げてみましたが、外部のそれぞれの利害を持った立場からの印象です。
個人的には、そう見られてもある程度、仕方がないだろうなと思います。別に腹は立ちません。
中小企業診断士の低評価はニーズがある。
一つ、留意しておかなければいけないことは、中小企業診断士への低評価はニーズがあるということです。
中小企業診断士に合格するには、1000~2000時間は勉強時間が必要で、さらに一次二次試験を通じて、受験者全体の5%程度しか合格できません。
つまり、合格者の20倍の不合格者が存在し、一次試験受験前に断念した人を含めれば、もっと多くの断念した人がいます。
何年も費やした勉強時間とお金が無駄になっている訳です。
一次試験さえ受かっていて、さらにお金と時間があれば経営修士(養成機関)という方法もあります。数百万払っても資格を取得する価値を感じている人もいるのです。
しかし、そこまでするつもりがない人にとっては、「中小企業診断士は意味ない」という評価は慰めになるはずです。
よって、ビジネスパーソン人気ナンバーワン資格で、ほとんどが挫折するとなると、中小企業診断士への低評価はニーズがあるはずです。
ニーズあるところに、シーズありです。資格取得支援がかなりのビジネスになっていることから、挫折した人をターゲットとしてビジネスとする人も出て来ます。
「中小企業診断士なんて意味ありません」、「世界最先端の経営理論をマスターしませんか」、「当社のセミナーを受講すれば、誰でも年収3000万を達成できます」とプロモーションして、高額セミナーに引き込むというケースも考えられます。
中小企業診断士の低評価の裏には落とし穴もあることは留意しましょう。
私が思う中小企業診断士の価値
世間一般、ネット上などで言われている低評価は、中小企業診断士という実態がわからない資格に対する外部からの印象に過ぎません。
ただ、上記のような低評価が起こるメカニズムは理解しておいた方がよいと思います。
各個人が意味あるかどうか判断するには、自分自身が中小企業診断士を取得した場合と、そうでない場合で比較して、見合った価値があれば、それで十分に意味があると思います。外部の印象など気にする必要がありません。
例えば、私は元々、理系出身の建設技術者ですが、30代から勉強を始めて中小企業診断士を取得したことで可能性は大きく拓けて、人生が変わりました。
中小企業診断士へのチャレンジにより、建設技術者(技術コンサル)→建設マネジメント研究(国の研究機関)→経営コンサル(独立)→人材ビジネス→М&A仲介と、人生二毛作どころか、いくつものチャレンジができて、独立前には考えられないような経験が積めてきています。
診断士が無ければ独立も考えなかったと思いますし、もし、技術者として独立したとしても、自分の専門分野だけを活動領域としていたでしょう。
私にとって、中小企業診断士の取得は十分すぎるくらいに意味がありました。
診断士というのは、30代~50代のサラリーマン、後発組にとって夢のある資格なのです。
これでは抽象的でわかりませんと言われそうなので
各個人が具体的に中小企業診断士を取得する意味があるか判断する方法を挙げてみたいと思います。
まず、診断士を取得して得られるメリットを以下に挙げます。
・偉そうに経営に意見したり、コラムを書いても、「素人のくせに」と言われない
※経営マネジメント全般の基礎知識があるという信用になり、経営意思決定に関与する機会が増える
・いろんなビジネスモデル、経営者や専門家に接する機会が増える
・ビジネスチャンスを見つけたら、それを実際にビジネスにできる
・中小企業対策(補助金助成金など)という、毎年数千億以上のお金の流れの執行の末端(現場)に関われる
→いろんなところに稼ぎ所があります。
・公的支援機関の専門家派遣、経営相談、プロマネ(半常駐)といった仕事の可能性がある
→中高年、未経験でも経験が積める
以上になりますが、自分自身が、この辺のメリットを組み合わせて、新展開や価値を出せると感じるなら、中小企業診断士に挑戦する意味はあると思います。
様々な資格がありますが、国家資格で、経営の知識が習得できて、様々な機会やネットワークも増えて、結果、経験値が高められて、ビジネスチャンスを見つけたら実際にビジネスにできる という資格はレアだと思います。
ご参考になれば幸いです。