ベーシックインカムは実現してしまう件

前ページ「財源的可能性の検証」より続き

ベーシックインカムを実現させる方法

1.予想される猛烈な反対 

 ベーシックインカムにいくら社会的意義があり、財源的にも実現可能性が高くても、政策として実現するかどうかの話は別です。 
 現状の「ベーシックインカム」は、荒唐無稽なものとして扱われ「財源的に不可能」かつ「働かないでお金を貰うなんてけしからん」といった感情を持つ人が大部分です。
 また、財源可能性候補について実行しようとすれば、各方面から猛烈な反発が起こることは必定です。
 政治家、政党は、国民の支持がなければ存在できませんので、ベーシックインカムのような、大きな反発が予測されることに取り組む、政治家が、現れることは期待できそうもありません。
 だから、現段階では、理論的には可能でも実際は「実現可能性が低い」と言わざるを得ない状況です。

2.時代の流れはベーシンクインカム普及に進む

 世界的にみて、ベーシックインカムが普及していないのは、これまで、支給コスト、時間的な面で「技術的に不可能」だったからでしょう。
 しかし、現在、フィンテック等の技術進歩により、国民と紐づけされた口座があれば、低コストかつ迅速に、国が直接国民に支給することが技術的に可能になってきました。
 新型コロナ時の特別給付での対応の困難さ(時間、コスト的)から、今後、景気対策等で、迅速に支給するためにマイナンバーと口座の紐付け等が進む方向に世の中は進んでいます。
 ※新型コロナの特別給付のように国民に直接支給した実績もできました。
 また、労働市場を見ると、テレワークが普及し、大企業においてもジョブ型雇用への移行が動き始めています。今後は、伝統的雇用体系である年功序列、終身雇用が崩れるばかりでなく、フリーランス人口の増大、複業、ギグワークと言った労働市場も拡大し、社員、雇用といった形の労働者の比率は、ますます減少していくでしょう。
 企業側にとって、年功序列、終身雇用はリスクであり、必要な人材を必要な時だけ使う、「雇用以外の労働市場」は、テレワークにより国境を越えて広がっており、もうこの傾向に歯止めがかかることはありません。
 そのため、失業率さえ低水準に維持して、企業に、雇用および従業員への福利厚生、社会保障を要求する政策は、意味のない時代になるでしょう。
 国が直接国民に対して、社会保障を提供しなければならない時代がきています。
 今後、全世界的に、同様の傾向でベーシックインカムの意義が高まると予測します。

3.実現するための方策

①「ベーシックインカム」→「国民手当」に呼称を変更する

 まず、「ベーシックインカム」という呼び名を止めて、「国民手当」という呼び名にすべきです。
 どうしても、「ベーシックインカム」という響きに、「働かないで暮らせる社会」→「労働を放棄し、退廃的に暮らす人達が大勢出て来る」といった感じがしてしまいます。
 目標を「働かない暮らせる社会を目指す」ではなく、「決して切れない命綱があるから」「やりたいことに挑戦できる社会を目指す」としなければ、世論の多数の賛同は決して得られないでしょう。
 そのため「働かないで暮らせる社会」というイメージとは決別すべきするために、「国民手当」という呼称に変えた方がよいです。

②国の事業として行うこと

 社会保障を、地方自治体に押し付ける形になりがちです。
 このやり方では、絶対に成功しないでしょう。
 理由は、地方財政規模は国の半分程度しかありませんし、自治体ごとの財政レベルにもムラがあり(地方ほど不利)になります。さらに首長が交代することで、継続性も危うい状況です。
 また、「住所不定者」等のセーフティネットから漏れる人達が数万(数十万?)単位で出て来るでしょう。
 国・地方分担というやり方も、手続き、仕組みが複雑になり、迅速性もなく配布コストが膨大になるでしょう。
 国と国民が、フィンテックにより直接つながるシンプルな仕組みとするために、必ず、国の事業として行う必要があります。

③まずは毎月5000円の国民手当を目指す

 マイナンバーと口座が紐づけされていれば、毎月5000円の国民手当を支給することは、年間5兆円の予算で出来るはずです。
 通常の景気対策の補正予算で財政出動している規模であり、政治的決断があれば、反発を抑えて実施できる可能性は高いです。
 既に、新型コロナ対応で全国民に10万円(12兆円)特別給付した実績があります。
 今後、景気対策の特別給付は、毎月5000円×12か月(年間6万円)×2年という形で実施されるべきでしょう。
 ※2年間で10兆円の予算(5兆円×2年)で出来ます。
 いずれ電子政府化実現のために国民カード等の導入が必ず必要になります。国民手当の支給は、国民カード導入への世論の合意を形成する方策となるでしょう。

④国民手当の社会的意義の認知と拡大

 有期限(2年)の特別給付による毎月5000万円の国民手当が実現すれば、現状の児童手当のように社会的意義が理解できると思います。
 国民の大多数に、社会的意義の共通認識が出来てくれば、その後は、継続化や財源確保策を進めて手当の規模を拡大していくことになるでしょう。
 長期的に、その効果を検証しながら、10年くらいかけて毎月3万円程度までは拡大できる可能性があります。
※国と地方の総予算の13%(30兆円)で、実現可能です。

 毎月3万円、5人家族で月15万、年間180万、10年で1800万、20年で3600万円です。
 どれほどの生活不安を軽減し社会・地方の活性化に繋がるのか、ご想像にお任せします。

まとめ

①この30年で世界経済は4倍に成長、日本はバブル以降ゼロ成長、世界から相対的に年々衰退中
②多くの現役世代が、親の世代より貧しく、生活・将来不安を抱えている。
③日本が成長できないのは「挑戦する人が少ないから」 有能な人材ほど挑戦しない
④挑戦できないのは、失敗したら「やり直しの利かない社会」、セーフティネット「命綱」が不完全だから
⑤ベーシンクインカムは、切れない「命綱」であり「挑戦できる社会」に繋がる
⑥「挑戦できる社会」になれば、産業の高付加価値化、生産性の向上、経済活性化、地方再生、出世率向上など、長期的には、膨大な社会的効果(間接効果)
⑦ベーシックインカムのデメリットは「金額」が大きくなると生じる(労働放棄、財源的困難さ)
⑧命綱としてのベーシックインカム(国民手当):月1万円(10兆円)、月3万(30兆円)で可能
⑨月3万支給でも膨大な効果:5人世帯で月15万、年180万、10年1800万、20年3600万の所得増
⑩財源は、月1~3万程度までは「税収増」、「運営効率化」、「事業の見直し」で確保可
⑪現状の社会保障やインフラ、教育、防衛予算等を縮小せずに実施可能
※月3万支給は、国と地方の総予算230兆円の13%(30兆円)
 ※長期的には、経済活性化による税の増収効果でペイできる?
⑫国民手当と呼称を変えて、月5000円から実現すべき(年間予算5兆円)
⑬国の事業として国民に直接給付すべき(配布コスト、迅速性、継続性などの観点)
⑭長期的には月3万円程度を目標とし、実現すれば社会は、大きく良い方に変わる

おわりに

 このコラムを書いたきっかけですが、なぜ「IT技術が進歩し世界経済が4倍に成長したこの30年間で、日本だけゼロ成長なのか」、「多くの人が親の世代より貧しいのか」、そして「教育を受けた有能な人材ほど挑戦しないのか」いった疑問に対する回答を考察するためです。
 結論として「生活・将来不安が大きく」「命綱がないから挑戦できない」、「挑戦する人が少ないから社会が進歩しない」という負のスパイラスに陥っているのが現状の社会ではないでしょうか。
 ベーシックインカム(国民手当)という「切れない命綱」を整備することで「挑戦できる社会」に繋がっていくと思います。

 人間の最大の幸福は、「自己実現」だと言われますが、自己実現のために、何歳でも何度でも挑戦できる社会は、幸福度も最大になるはずです。

 併せて、時代の流れとして止められない、テレワーク、ジョブ型雇用や、複業、フリーランス、ギグワークの拡大する社会変化への対応もできて、最終的に、経済発展、地方再生、出生率の向上、ホームレスの激減など、世の中が良い方向に進んでいきます。
 このように、月1~3万円くらいまでのベーシンクインカム(国民手当)は、決して「荒唐無稽」ではなく、社会的に有効なものだという共通認識の醸成に繋がることを期待して、一コンサルタントとしての、社会貢献意欲から当コラムを書かせていただきました。
 
 少しでも社会が良い方向に進む一助となることを願っております。

 ※政治活動に関与しない主義なので、政治関係者、マスコミ等々の当方への接触は、ご遠慮お願いいたします。