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中小企業診断士が年収3000万のカリスマ経営コンサルタントになる方法

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 中小機構の「データで見る中小企業診断士2016」による業務年間売上(または年収)は、アンケート回答数の4.3%が3000万以上だそうです。
 「25人に1人」だとすると結構いますね。国税庁の民間給与実態調査統計では年収2500万以上の比率は0.2%、「500人に1人」となっています。
診断士の場合、高所得者がかなりの比率で存在することになります。
 (※給与実態なので、診断士アンケートの業務年間売上(または年収)とは違いがある点、ご了承ください。業務年間売上も含まれるということは、人を多く雇っている場合は、実際の収入は少ない可能性もあります)

 高収入の診断士の詳細は不明なのですが、人を雇って会社を経営している人も多いと思います。
 診断士やコンサルタント会社は、経営コンサル以外にいろいろ稼ぎどころを持っていて、税務、会計、セミナー、助成金関係、システム導入支援、広告代理店、その他、関連する周辺領域を稼ぎどころにしているケースも多いと思います。 
 
 では、たった一人で、こうした周辺領域を除いた経営参謀のような純粋な経営コンサルタント部分で年収3000万以上稼ぐ人、いわゆるカリスマ経営コンサルタントに中小企業診断士がなれるか、その方法について考察してみます。

 独立して、つくづく感じたのが、日本の場合、「知恵にお金を払う習慣がない」ということです。
 遊興で何十万も使うのは平気でも、知恵にはお金を払うつもりがない社長も多いです。「無料だったら受けてもいいよ!」って感じです。
 全国あちこちに中小企業支援機関があり、そこに行けばほぼ無料でコンサルを受けられるのですから、まあ当然といえば、当然です。
 誰でも購買や投資をする時は、無意識に費用対効果を意識してお金を出すか決めています。
ほぼ無料コンサルというのは、顧客の期待値は小さいのが普通です。そのため、やる気のない企業も交じっています。
 また、経営コンサルタント会社が行う、本格的なコンサルタントも、実際は金融機関が再融資の条件としてコンサルタントを入れることを要求しているケースも多く、企業側は銀行に言われてしぶしぶコンサルを受けていることもあります。
 こういう部分も除いて、ちゃんと自腹でコンサルフィーを全額負担して、自ら進んで経営コンサルを受けたことのある中小企業というのは全体の何パーセントくらいあるのでしょうか。

やる気のない顧客に対する経営コンサルティングというのは、不毛なものです。コンサルティングが成功するためには


「コンサルタントと顧客の協同作業で経営の最適解を見つけ、実践していく必要」

があります。
しかし、コンサルタントは経営主体ではないため顧客側がやる気がないと、全然うまく行きません。結果として多くが失敗してしまいます。そして、その社長は、「経営コンサルはお金のムダ」と外で言って廻るようになります。

 逆にコンサルタントを入れて成功した社長は、社長とコンサルタントが協同作業で経営課題の解決方法を見つけて、実践して結果を出した人です。あくまで主体は社長なので、「俺が自分で考えてやった」と考えます。コンサルタントは、最適解に至る過程を導いたに過ぎないので、そう考えても不思議ではないのです。
 コンサルタントは裏方なので、コンサルタントが「私が、この会社を成功させた」と表に出ることはないわけです。
 社長が、ライバルでもある同業他社に「このコンサルタントはすごいよ」と紹介することもあまりないでしょう。
 コンサルタントのポジティブな情報は、基本的にはあまり表に出ないものです。
 
 そのため、世間一般のコンサルタントについての話は、ネガティブなものばかりで、そういう目で見られている前提があります。

 と悲観的なことを書いて来ましたが、実際、純粋な経営コンサルタント部分で稼げるか、方法論を考えてみます。
 「ビジネスは価値を提供してその報酬を受け取っている」という原則は、経営コンサルタント業においても同じです。
  例えば、「500万円投資して1000万円利益が確実にでる。」という条件で、違法性や詐欺や損失リスクもなければ、多くの人は投資するでしょう。
 しかし、実際は、実現性や詐欺、その他損失リスク等があり、怪しげな投資話に手を出す人は少ないでしょう。

 これを式で示すと、以下のようになります。
 コンサルフィー <<< 利益期待値 = 利益予想値 - α(リスク、実現性への疑念)

利益期待値がコンサルフィーの何倍もあれば、使ってくれる人がいると思いますが、純粋な経営コンサルタントで稼ぐのが難しいというのは、経営コンサルタントへの依頼が、怪しげな投資と同類で上式のα(リスク、実現性への疑念)が高いと考えられているからです。
 そのためどんなに良いことをいっても絵にかいた餅、利益期待値は小さくなります。

 では、経営コンサルタントを使うことの費用対効果ですが、実は非常に費用対効果の高いものです。

事例として私の専門の建設分野で以下に説明してみます。

 ゼネコン(元請け施工会社)というのは、技術者一人当たり年間売上は1億くらいはあります。
 地場の50数名の会社でも、50億円くらいの年間売上があります。
 こうした地場中堅クラスの会社で、ちゃんとした経営管理がされている例はあまりなく、基本的には、各技術者任せとなっています。
 
 具体的には、建設業というのは一品物の完全受注生産なので、まず最初(受注時)に価格が決まり、それから施工計画~施工~工事完成し、そこでコストと利益が確定します。
受注時の値決めは、「建設物価」のような公表単価をもとに積算するのですが、これは、いくらで入札したら受注できるかを推定(公共事業の場合の予定価格を)するために行われています。多くの場合、実際に自社ではいくらの工費で出来るか把握していません。(ある程度の経験則はあります)
 落札し受注後は、現場任せになりますが、会社は現場代理人に受注金額から必要粗利を引いて、残りの金額で工事完成を求めます。
 ゼネコンの売上の大部分は、下請けや材料費に消えていきますが、粗利を確保するためにかなり無茶な下請けたたきといった社会問題が起こります。
 元請けというのは、請けてしまえば完成責任があり、後から「やっぱりこの金額では無理です」とは言えません。下請けたたきにも限界があり、その場合は、工事はどれだけ赤字になろうとも完成させなければなりません。
 また、建設工事というのは不確定要素が多く、施工が始まってからの想定外の工事ストップや、追加工種、ケアレスミスのやり直し等ですぐに数千万単位の追加コストが出てしまいます。
 このように、実際の自社コストを知らず、公表単価で積算した落札可能価格で受注し、あとは現場任せで業務を行います。こうした博打的な受注で、黒字になったり大赤字になったり、そういう感じで業務が積みあがって50数名の会社で年間50億の売上と、企業の最終損益が確定されていきます。

 大赤字になった業務の理由を聞いてみると、「そもそもこの受注金額では大赤字になるのは当たり前の工事だった」、
「関連機関協議が未了で、施工がストップした」、「想定外の大規模な架設工事が必要になり2000万使った、発注者に増額要求したが遅いと断られた」、「発注者に許可を得ず、工事を進めてやり直しになった」というような話がボロボロ出て来ます。
 これらの大赤字理由はほとんどが事前に回避できたことです。

 過去数年分の各個人(現場代理人)の工事成績を整理すると、「会社の利益の8割は2割の人材が出している」という法則を実感できますし、その逆、損失でも同じことが言えます。
 個人間の成果に大きな差があることに愕然とします。
 現場の各技術者はOJTで現場たたき上げですが、皆さん、現場の主としてプライドも高く、ライバルでもある同僚とノウハウや情報共有もあまりしません。こうして個人間の差があることを皆さん、断固認めないことが普通です。
 そして、長年このやり方でやってきたので、もう変えるつもりもないのです。

 もし、社長が本気で取り組む覚悟を持ち、コンサルタントが協力し、社員に共通目標を周知させ、コスト、調達先データ集積、技術検討会のような施工ノウハウ共有や、第三者チェックのような仕組みを導入し、上手く回せるようになれば、選別受注による赤字工事の受注回避や、施工時の想定外の損失などの、損失を回避するだけでも、毎年、膨大な利益が増えて来ます。
 さらに調達先の共有や、施工ノウハウの共有で、品質(工事成績)や生産性はさらに上がります。
 そして社員の給与も上がって、離職率も下がり、優秀な人材も集まり、すべてが良い方向に回り始める可能性があ
ります。

 コンサルティングの受けた成果が、50億円の年間売上に対して、仮にたった1%の利益率アップとしても年5000万の利益増、5年で2億5千万円です。
 利益による再投資効果や、財務改善による金利支払い負担軽減等を考えればさらに増えます。
 10年スパンで考えれば、10億円以上の利益が出る可能性があります。
 
 では、あなたが社長だとして、10億の利益のために、コンサルタントへ報酬をいくら払いますか?

 

理論は分かるが、いやいくらなんでも、そこまでは利益増大しないでしょう。その半分もないよ、としても3億です。
 ひょっとしたら、20億になるかもしれません。
  
 コンサルタントに二年で1000万(年500万)の報酬を支払ったとします。
10億の利益増になれば、コンサルを使う費用対効果は100倍!になります。
 実現できるかどうかは、社長が本気で取り組むかどうか、その覚悟が重要です。
                         ―以上―

という感じで、経営コンサルタントを使うことの費用対効果を地方ゼネコンの典型例で書いてみましたが、どのように感じたでしょうか?
これが「絵にかいた餅」としか感じる人しかいなければ顧客獲得はゼロでしょう。
もし、上記のような形で経営者に訴求して、「なるほど、実現性あるかも」と感じていただけて、私に怪しさがなければ、経営者100人に一人くらいは、依頼してくれるかもしれません。
そして、6社顧問を確保できれば500万×6社で3000万の年間報酬になります。
周辺領域での稼ぎも入れれば、もっと行きます。
また、顧客の目標を達成できれば、その会社は、その後もコンサルタントを放しません。
たぶん、年200万位で、何か月に一回訪問するだけでも顧問契約をしてくれます。

「顧客に価値を提供して報酬をいただく」原則から絶対に外れてはだめです。それはただのインチキです。
また、コンサルティングが成功するためには、経営者とコンサルの協同作業が必要で、経営者の本気で取り組む覚悟が絶対に必須です。この条件が揃わないと成功しません。
ちゃんと価値が提供できればそれに応じた報酬を払って、本気で実行する覚悟のある経営者は見つかると思います。

 この記事を読んでいて「じゃあお前はどうなんだ?」と突っ込みを入れている人も多いと思います。

え~私の場合は、いろいろありまして。(以下言い訳です)
 
 独立3年目くらいから、覚悟を決めて 上記のように経営者に訴求するプル戦略で、やる気のある顧客を獲得し、顧客に大きな価値を与えて、私も報酬をがっつり頂く、そんなコンサルタントになるべく活動を開始しました。
 活動を始めたら、経営コンサルタントではない、想定外の引き合いというか、ニーズが集まってくるようになりました。
もうそこに顧客があるのですから、期待に応えてビジネスにすることにしました。
自分でビジネスをやってみたら、情報がさらに集まるようになり、そちらが面白くなってしまいました。そこで発想の転換というか開眼したこともあり、その他いろいろありまして、本格的な経営コンサルタントには、踏み込んでいません。
 以上、やらない言い訳でした。
 「自分が実現してないのにいうな!」と叱られそうですが、この記事を書いた理由は、私が中断してしまったビジネスモデルを公開して、他の診断士の参考にしていただこうと思ったからです。

現在の現役世代は、将来70代まで働かなければならないと思います。
40代だとしてもあと30年もあります。
 独立を考えているなら、こうした大きな目標を視野にいれてもよいかと思います。
 長期的視点で大きな目標に取り組めるなら、実現まで10年かかっても、すぐに元が取れると思いますよ。
 まあ、老後に「あの時独立してればな~」なんて後悔はしたくないものです。

中小企業診断士合格者は、それぞれの業種で実務経験や実績を積んでいるスペシャリストも多く、中小企業診断士という国家資格もあるのですから信用面で有利です。あとは、それぞれの専門分野や業種でコンサルタント使うことの費用対効果を明確に経営者に認識してもらえれば可能性があると思います。

能力的にはできる人が結構いると思っていて、もったいない気がしています。
私の仮説を誰か実証してくれませんか?

 ここまで、「経営コンサルタントを使うことの費用対効果はすごい」というような話に妥当性があると感じた人の中で、二種類の反応があると思います。
 
 一つは、「経営コンサルタントを目指そう」という人、もう一つは、「費用対効果が100倍?が可能なら、経営者はコンサルタントの100倍利益を得ていることになる」、「経営コンサルタントは割に合わないな」、と感じる人です。
 
 私も下積み時代に、こうした年間500万以上の報酬を取る経営コンサル業務の端くれに加えていただき、経験を積ませていただきましたが、経営コンサルタントのトップの人は、「自分が今、30代くらいだったら自分で創業するな」、「一代で上場企業にできる自信がある」とおっしゃっておりました。

 「マネジメントの知識をどう生かすか」ですが、そこで、最初から起業、実業者を目指すというのも手かと思います。
 また、本質的な経営コンサルタントは社長の右腕として、いろんな会社の経営に立ち会うことができるのですから、経営コンサルタント自身が一番成長できるはずです。また、さまざまなニーズも自然に集まってきます。
 
 まだ、40代くらいで診断士としては若手であれば、まず経営コンサルタントに全力投入してパワーアップしてしまえば、そこから自然に、次の展開、さらにその次といくらでも広がっていく可能性もあります。
 
 楽な道ではないですが、面白いと思いますよ。
 独立に迷う中小企業診断士の参考になれば幸いです。

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