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業種特化vs機能特化どちらが有利か

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 中小企業診断士・コンサルタントとして独立した場合、顧客から仕事を貰うためには、何らかの得意分野を持つ必要があります。

 なぜかと言えば、顧客となる企業は、何らかの業種を営んでいます。また、何らかの経営課題を抱えてその解決のために、仕事を依頼してきます。
 発注側としては、当然、複数の依頼先探して、比較検討してどこに頼むか決めています。
 その時に、「どんな業種でもやります」という人と、「○○業に特化した経営コンサルタントです。」という人がいたら、当然、自分たちの業種に特化したコンサルタントを選択するでしょう。
 また、マーケティングの課題を解決したいのなら、マーケティングの専門家、事業承継の相談がしたいなら、事業承継の専門家に依頼がいくでしょう。
 「何でもできます」という人は、そもそも、顧客側の発注先比較の対象にすらなりません。

 得意分野を持つことの重要性は、お分かりいただけると思います。


 では、得意分野を持つ場合、大きくは「業種特化型」と「機能特化型」のコンサルタントに分かれます。
 
 「業種特化」というのは、飲食業、小売業、製造業、医療業界など、業種や業界に特化する形です。
 「機能特化」は、ITマーケティング、組織・人材育成などの経営機能に特化したり、助成金獲得、事業承継、事業再生など特定課題を解決することに特化する感じです。
 現状の診断士を見ると、比率的には、機能特化の方が圧倒的に多いと思います。
 別に計測したわけではないので、主観ですが。。

 これから独立を考える人のために、業種特化、機能特化の比較してみたいと思います。
 ここでは、中小企業診断士が独立して、食べていく、稼ぐのにどちらが有利か、その視点で考えていきたいと思います。

その1:始めやすさ


 独立した診断士の大部分が、機能特化タイプであることから分かるように、始めやすさは機能特化だと言えます。研究会やコミュニティに属して、情報収集や、下働きもしやすく、機能特化型のコンサルタント会社もたくさんありフリーランスで修行もしやすいでしょう。


 一方、業種特化の場合、独立前に特定業種の大企業で営業や技術など部署に所属していても経営全般が分かる人はレアで、独立してすぐに、その業種の経営の専門家と名乗るのは、難しいでしょう。
 業種特化で活動している診断士やコンサルタントも少なく、業種特化型の研究会に参加してみても、実際は企業内診断士ばかりと言った感じです。情報収集や下積みといった機会を得るのもなかなか難しいものがあります。
 
その2:市場規模


経営機能に関する部分については、どの企業も経営に必要になるものなので、潜在的には膨大な顧客対象があります。
一方、業種特化の場合、顧客は限定されてしまいます。特に地方の場合は、顧客対象がかなり少ないケースがあります。

その3:競合


 機能特化の方が、始めやすく、市場規模も大きいのですから、参入者が多く、競合は激しくなります。
 例えば「ITマーケティングコンサルタント」とか、「人材育成コンサルタント」などキーワードで検索すれば無数の競合他社が見つかるでしょう。
 そのような多くの競合に比して、成功を収め、それを維持することは大変です。
 独立した診断士にとって、機能特化の場合、直接受注というのは難易度が高く、間接受注、どこかの下請けといった受注が主体になり、またそこから脱却することについても困難さが伴うでしょう。

 一方、業種特化の場合、競合はずっと少ないです。「○○業特化のコンサルタント」という感じで、特定業種で情報発信等を地道に続けていれば、検索上位に入る可能性も高く、その後の維持もしやすいでしょう。

その4:顧客との関係と発展性


 実際に企業にコンサルに入った時に、機能特化型の場合、経営課題に合わせた部署(営業や総務など)の人が担当者で、経営トップは最初の挨拶程度というケースが多いと思います。
業種特化型コンサルタントの場合は、会社の経営全般を対象とする形になりますので、経営トップを直接相手にする場合が多くなります。
コンサル時の経営トップの関与の度合いは、業種特化型の方が強いでしょう。

 業種特化型の場合は、経営全般について経営トップとやりとりすることになるので、自然に関係が強くなります。
 従って長期的な関係になりやすく、経営者の要望に応えて、いろいろなコンサルや、リソース獲得支援など提供していくような展開が起こりやすいと言えます。
 既に顧客が居て、要望されて新サービスを提供するのですから、その成功確率も高いでしょう。
 こうした活動のメリットはやればやるほど、さらに情報がどんどん集まってくることです。そして、その業界の情報通になっていきます。希少価値が上がってきて、そこにニーズが集まります。
 オンリーワン的な発展性があります。

まとめると、「始めやすさ、下請け仕事の多さ、情報の多い点」で、機能特化型コンサルタントが有利で、「参入の難易度が高いものの、上手くいけば、直接受注しやすく、稼ぎやすく発展性も高い」のが業種特化型コンサルタントだと思います。
 双方、一長一短があります。
 ※中小企業診断士が独立する場合の話です。

 独立時の専門分野の設定において、双方のメリットを上手く組み合わせていけば成功確率が上がります。
 具体的には、独立から数年は、機能特化型コンサルタントとして活動し、下働き(間接受注)等で修行を積み、同時に特定業種の研究し、情報発信しながら業種特化型(直接受注)に移行していくようなやり方が考えられます。

イメージとして、キャリアを上乗せして、希少価値を挙げていく感じです。例えば、ITマーケティングが専門の人が、その分野を極めつつ、特定業種を研究し、「○○業特化のIT・マーケティングのコンサルタント」として売り出す。
そうすると、新たに情報もニーズもチャンスも見えてきますので、そこからさらに数年後に次の展開と、二段三段と、想定しておいて、5年単位くらいで、新展開、新ビジネスを立ち上げていく方が、飽きも来ないし、楽しめると思います。
また、最初に掲げた看板は下げる必要はなく、「得意分野の看板」は、いくつもあって大丈夫です。

ITマーケティングでイメージしましたが、事業再生コンサルなども、最初の入り口としてはよいかもしれませんね。
いろんな展開が考えられると思います。

ご参考になれば幸いです。