中小企業診断士(二次試験)に合格できない人へ(採点方法の考察)

 中小企業診断士(二次試験)は、掴みどころのない試験です。

 予備校の模範解答に近いのに、連続で不合格だった人などは「八方塞がり」な絶望感を持っている人も多いと思います。

 ※私も多年度だったので、気持ちは分かります。

 二次合格の希望を失いかけている人のために、今後の二次攻略のヒントになりそうな、私個人の意見を述べたいと思います。

中小企業診断士の採点方法が非公表なことの意味

 中小企業診断士の採点方法は非公表となっています。

 合否とABCDなどの評点が提示されるだけで、得点開示請求もできますが、採点答案は見られません。

だから何がダメなのか知ることができず、筆記試験でもあり採点者の主観に左右されるのではないかと、もやもや感が残ってしまう人もいます。

 一方、試験予備校では、各校が採点方法を推定し、解法を生み出して、それを売りにして商売しているような状況です。

 もし、診断士協会が採点方法等を公開したら予備校の解答テクニックに磨きがかかって、テクニックだけで合格する人も多数、出てくるでしょう。

 そんな人は、実践で役に立たないと思います。

 だから、採点方法非公開は、診断士試験では妥当だと思っています。

 中小企業診断士(二次試験)は、「採点方法 非公開」を前提として、どうやって上位20%に食い込むか、「出題者の意図」を考えるゲームでもあることを認識しましょう。

二次試験の採点の実態を推定

 実際のところの中小企業診断士の二次試験(筆記)の採点方法について、考察してみたいと思います。

※「多分こんな感じだろう」という完全な推測です。

現状、分かっている採点側の条件

 現在、分かっている試験の状況をまとめると下記になります。

①二次試験日から合格発表までが短い(1か月半)

 採点期間一か月程度で6,000人×4事例で24,000事例を採点していることになります。

②合格基準は「総点数の 60% 以上」でかつ「 1科目でも40%未満のものがない者」

③合格率は毎年20%弱でほぼ一定

採点の実際を推定

「採点側の条件」より採点の実際を以下のように行われていると推定します。

①一事例あたりの採点時間は数分程度

 一事例あたりの採点時間5分、二人の採点官でダブル採点していると想定

一科目あたりの採点工数は、6,000事例×5分×2(ダブル採点)=60,000分→ 1,000時間

 実質の採点期間は一か月程度、採点官は専従とは考えにくく、一人100h程度が採点時間の限度とすると

 一科目あたり10人×100h=1,000時間で採点していることになります。

 一科目あたり最低でも10人の採点官が必要で、4科目(事例1~4)で40人が必要です。

 実際は最低でも60人以上で採点している思いますが、それでも相当過酷な採点スケジュールです。

②Ⅾ判定足切りについて

 合格基準に「一科目でも40%未満がないこと」とわざわざ書いてあるので、足切りはあります。

 定量的採点できる事例4(財務)では、恐らく30%くらいが「足切り点」に該当していると思います。

さらに他の科目(事例1~3)で20%くらいが足切りされて、全体で50%くらいがⅮ判定で足切りされているのではないかと推定しています。

 50%足切り説については、予備校等で測定した生徒の判定データと一致しない可能性がありますが、その理由として

二次 初受験者で明らかな準備不足のケース、Ⅾ判定足切りが恥ずかしくて隠している人、および独学者のデータが把握されていないためだと思います。

特に独学・自己流の人は、ケアレスミスや大ポカをやりやすい気がしています。

 ※私も独学で大ポカ経験あり、模試を受けまくって解決

③採点の客観性について

 採点は以下のような手順で行われていると推定します。

 まず、一つの事例を二人の採点官が別々に採点し、点数差が少ない場合は、その平均値を点数とする

二人の採点官の点数差が大きい回答は、上位の採点官が審査するような形で、客観性を確保していると推定します。

最終的に、多少の補正、受験者回答の優劣等を比較して順位、序列を決めていると推定

以上のような流れで、一事例を数分で次々に高速採点していると推定します。

④合格ラインの設定

 毎年の合格率が20%弱で、ほぼ一定であることから、受験者数から、大体の合格率→「合格人数」をあらかじめ設定しているはずです。

 4科目のそれぞれの採点結果から、50%程度を「Ⅾ判定」足切りし、残った人の4科目の合計得点を総合点に調整、合算し、その合格予定人数に達する点数のところまでを、合格者としていると予測します。

 つまり「合格基準は総点数の 60% 以上でかつ 1科目でも 40% 未満のものがない者」の意味は

 6,000人の受験者から50%をⅮ判定足切り、残り3,000人の総合点60%以上(1200人)位が合格になるということです。※実際の合格率はもう少し厳しめです。

採点者はどういう人を合格させたいか推定

 採点者は、二次受験者から「中小企業診断士にふさわしい」上位20%弱を選出したいはずです。

 中小企業診断士は、公的機関の中小企業対策の現場支援や、経営診断、助言等のコンサルタントを行う職業です。

 「中小企業」の実際は、当たり前のことが行われていない場合がほとんどです。

 つまり、「中小企業診断士としてふさわしい」とは、中小企業経営者に対して「当たり前のことを当たり前にやる」ように指導できる人材です。

しかし、個人も組織も「当たり前のことを当たり前にやる」ことが一番難しく、ましてや、プライドの高い経営者に助言して実行に移すことは、とてつもない難易度です。

※本当にできる人はカリスマになれるでしょう。

 この試験は、経営診断・助言の模擬であって、中小企業経営者に対して、「やるべきことを簡単明瞭に説明し納得させて、実行に移す」能力を見ています。

 採点官は専門家ではなく、助言される側、中小企業の経営者視点で、回答を見ています。

 だから、天才的な発想や、常人には理解できない深遠なロジック、最新理論は求められていません。

 そういう回答を書いても評価されないことを肝に銘じましょう。

具体的な合格者選定の流れとして

①まず「中小企業診断士にふさわしくない人」を除外(全体の50%近く)

 企業への助言・診断で、一番困るのは「的外れ」「理解不能」「低レベル」なことです。

だから、Ⅾ判定足切りで、そうした受験者(一科目でもレベルが低いか、難解、理解不能、的外れな助言を行った人)を除外していると推定します。

②残った人材から「中小企業診断士にふさわしい」上位40%を抽出、合格者としていると推定します。

Ⅾ判定足切りされなければ、合格率は40%なわけで、何とかなりそうな気がしませんか?

どうやってABCD判定分けしているのか考察

 実際の採点が、一事例10人程度の採点官が採点を行っていたとして、例えダブル採点であっても採点官によって辛目、甘目だったりして点数がバラつき、合否に「運」が左右される可能性があります。

 それをどうやって補正しているかについて推定します。

採点側に「模範解答」や「採点方針」は存在していると思います。

 「全体最適解」は、パターンが分かれるので、「模範解答」が複数存在する可能性があります。

 しかし、「模範解答」や「採点方針」だけではABCDの判定分けする基準になり得ません。

そこで実際の採点時に、回答答案から、「この答案でA判定(60点)」、「この答案をB判定(50点)」(同じくC,D判定も)という感じで、「判定基準になる回答」を採点者グループで設定し共有していると想像します。

実際の採点は「判定基準になる答案」との優劣を比較して採点していると予測します。

つまり、採点者が「A判定基準の答案」よりレベルが上だから、「62点」という感じで採点しているのではないかと思っています。

つまり、この試験は点数化されていますが、点数は、他の受験生の回答答案との相対評価で決まっていると予想します。

次に二次攻略の具体的方法について解説します。

二次攻略のための最低限のラインの強化

合格確率を上げるために、まず最低限のラインを満たす必要があります。

①Ⅾ判定 足切りされないこと(最低でもB判定)

 一科目でもⅮ判定があると、他の科目が高得点でも不合格です。

 一科目でもⅮ、C判定ありの人は、改善が必要です。

 C判定+ケアレスミス等でⅮ判定なので、各科目、最低でもB判定を取るようにすべきです。

 そのために、苦手科目を克服すること、ケアレスミスや大ポカ(的外れ的なミス)しないことです。

②事例4(財務)の徹底強化

 事例4は定量評価しやすく、足切りに引っ掛かりやすい反面、唯一、高得点が可能な科目でもあります。

 ここで得点を稼ぐことで、かなり合格率が上がります。

事例4は、徹底的に強化しましょう。

多くの問題をこなすと共に、白紙状態から素早く確実に解けるようになるまで練習しましょう。

③一事例あたり、数分で採点されていることを留意

 80分かけて頑張って作った回答も、採点時間は数分しかありません。

 採点官は膨大な数の採点をして疲れてもいます。

 だから、採点官に理解しやすいシンプルで説得力のある内容である必要があります。

 採点者 = 「助言診断される中小企業経営者」という視点で回答を作る意識が重要です。

一皮むけるためのヒント

①全体最適解を重視すべき

 経営コンサルタントの目的は、経営目標達成のための「最適化方法の提案」です。様々な制約条件の中で、より良い方向に進むように助言すべきです。

 つまり診断助言での重要度は、全体最適≧部分最適です。どれほど、個別の対策(部分最適)をしても、経営目標への全体の方向性が合っていなければ意味がありません。

二次試験の問題は、想像を超えるくらい練り込んで作成されているはずです。

 採点内容は、事例回答全体を診断助言事例と捉えた「全体最適解」と、個別の設問の回答の「部分最適解」の二つに分かれているはずです。

 採点でも同じように、各設問の解答が正解(部分最適)でも、回答全体として整合していないと大きく減点になると予測しています。

 これが、試験予備校各社の模範解答と合っているのに、低評価となる原因だと考えます。

 また、設問に「引っ掛け問題」があると思います。

つまり、書くと減点になることも存在していると思います。

具体的には、本筋からの逸脱や、与件企業の優先度、実現度が低い提案などが考えられます。

②解法にこだわる危険

 各試験予備校の解法は、過去の事例を研究し作られた、限られた時間でA判定を獲得するためのテクニックです。

解法テクニックにこだわり過ぎると危険があります。その例として

・採点方法が非公表な中で、解法と、出題側の意図とは、必ず「ズレ」がある。

・予備校の模擬試験では、解法に準じていれば高得点が取れるので実力を勘違いしてしまう

 ・採点時は「そっくり回答」が続出し、採点者に解法テクニック丸出し感が伝わっている可能性がある。

  などなどです。

「出題者の意図」を重視して最適解答を導き出す指向が必要で、解法にこだわる過ぎるのは良くありません。

③過去問事例研究の重要性

 実力があるのに、毎年惜しいところで不合格、多年度になっている人は、「出題者の意図」を汲むことにあと一歩足りていない可能性があります。

 「出題者の意図」を汲む訓練として、重要なのは「過去問事例研究」です。

 具体的なやり方は、以下の手順です。

・まず、あらゆる「過去問解答例集」や解説を集めます。

・過去問を試験と同じ80分で解いてみます。

・自分自身の回答と、各社・各人の解答例集などから、同一の事例に対して、どのように考えたのか違いや共通点を認識します。

・「出題者の意図」あるいは、より最適解は何なのか等を考えてみます。

 ※与件企業の状態が、明確にイメージできるようになって来ると思います。

 上記のようなことを、過去問5年~10年分やれば「出題者の意図」を汲めるようになるはずです。

④模擬試験を受ける

二次試験は、合格ライン前後に多数が該当しており、ちょっとしたミスでの数点のロスが明暗を分けているはずです。

 合格ライン突破には、より実戦に近い形で問題にあたることが効果的です。

 実戦に近い形でしか、気づけないことは結構あります。時間配分や、ケアレスミス、場慣れ感、その他、暗黙知的なことなどいろいろです。

 模擬試験は、なるべくたくさん受けましょう。

 自分の通っている予備校以外、得意な解法以外のものも受けましょう。

 解法に準じていなければ、A判定は取りにくいかもしれませんが、あまり気にしなくてもよいと思います。

おわりに

 二次試験勉強は、中小企業経営者への診断助言の模擬訓練だと考えてやってください。

 上記のような勉強方法は、本当の「底力」になるはずです。

 今の仕事でも、独立後も生きてくることです。決して無駄にはなりません

 二次試験、諦めかけている人のヒントになれば幸いです。

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