シェアする

中小企業診断士同士のマウンティングについて

シェアする

私が中小企業診断士になって衝撃を受けたことは、診断士同士のマウンティングが多いことでした。

 ※私が「仕事がない」アピールをしていたからかもしれませんが

 当時(2010年前後)は、派閥闘争大好きな、昭和的な価値観の団塊世代が、まだ50代後半の現役だった時代です。

 恐らく、マウンティングは今より激しかったと思います。

 プロコン塾でも、講師から「団塊世代とは争うな」「超競争世代には絶対に勝てないから」「別の世界で勝負しろ」と忠告されたこともあります。

そこで、特に印象に残っているマウンティング事例を紹介し、背景について考察してみたいと思います。

マウンティング事例について

①ありがちなパターン

良くあるパターンは、学歴や出身企業や役職などのステータスを語って、その後、こちらにダメ出しして来るパターンです。

 ダメ出し方法ですが、まず、私の独立後の目標や計画を質問し、その回答をことごとく否定する感じです。

 例えば「活動エリアは全国です」と答えれば「君なんかにできるわけない」と言われ、「仕事は、ホームページからの直接受注を目指します」と言えば「僕の長年の大手での経験上、絶対に不可能」と言われといった感じでした。

 ※今思えば、新人が「直接受注、全国展開」を目標としていたら、ダメ出しされても仕方がない気もします。

 また、「管理職経験のない奴にコンサルができるわけない」とか、私の出身業界を指して「○○業のやつは馬鹿しかいない」と言われたこともあります。

 「○○大学、○○社すごい → 俺すごい」「○○業 → 馬鹿しかいない → お前は馬鹿」、「中途退職した若手 → 社内の負け組、社会不適合者」という感じのロジックでマウンティングしてくるのです。

 私自身は、「サラリーマン時代の実績や能力でも俺の方が上だろ?」と内心は思っていましたが、それはさておき「独立して、成功していないお前に言われたくない」と思っていました。

 さらに、「僕は、○○銀行の元支店長」「本当は、君なんかが口を利ける存在じゃない」などという人にも何人か遭遇していますが、なぜか元大手金融機関の人ばかりだったのですが、たまたまなのか、選民的価値観の世界なのかは、未だに謎です。

 

②何をしてもダメ出し

独立して数年が経った頃ですが、私はいろいろやって生き残っていました。

 診断士の集まりに、たまに参加すると、そこでネガティブな反応をする人がいます。

 例えば、近況を聞かれ「コンサルタント会社でフリーランスをしています」と答えれば

「フリーランス?サラリーマンに戻ったのか!」とか「結局、下請けか!」などと言われます。

 さらに、経営コンサルタント、民間企業はただの金儲け、悪いことをしている的なことを言い出します。

 そして「俺は公的支援だから社会貢献している」と続きます。

「前職の知り合いから依頼された仕事をしている」と言えば、「前職の人間関係にすがって情けない」みたいなことを言われます。

 「ブログとかホームページからもたまに仕事来ますよ」と言ったら、「そんなの邪道」「中小企業診断士は口コミと紹介だけで営業すべき」と言われます。

 また、「人材ビジネスを自分で始める」と言えば、「大手がしのぎを削る市場で、やれるわけない」、「頭おかしい」的な言われ方をされ、その後、それなりにやれていると言えば、今度は、「お金大好きなんだね」と金の亡者的な言われ方をされ、「そんなことまでした稼ぎたくない」、「俺もその気になれば稼げるけど、もう悪いことはしたくない」などと言いだします。

 結局、何をしてもダメ出しされてしまいます。

 ここまで来ると、どんなトンデモ理論が出てくるか、楽しみになってきます。

 ※上記のマウンティングは、独立5年くらいで経験した中で極端な事例です。また、今の中高年は、昔より遥かにまともですので、不安にならなくても大丈夫です。

 

③極端なオジサン

ある時、研究会にスポット参加で「癖の強そうなオジサン」が来ました。

 その後の飲み会で、会の大御所が皆にマウンティングをしていると「癖の強そうなオジサン」が

「こんな雑魚新人と一緒にされては困る」、「自分は、年収1500万あるんだ!」と言い返したのです。

 すかさず大御所が「何をやって稼いでいるんだ?」と聞き返し、そのオジサンが「セミナー講師」と答えると

大御所が「セミナー講師?そんなのコンサルじゃない」という返しをしたのです。

 そのオジサンは、悔しそうに憮然としていました。

 この時の私は、そのオジサンに「雑魚新人」呼ばわりされた直後だったので「さすが大御所、そこにしびれる、あこがれるぅ!」という感じでした。

 ※この時の私の表情を、そのオジサンに見られていたようです。

 その後、私がトイレに立つと、そのオジサンもトイレに立ちました。

 そして、トイレで私の隣に立つと「君は、どこの養成出身?」と聞いてくるのです。

 私が「試験合格ですが。。。」と答えると「え~噓でしょ、本当は養成でしょう?」となかなかしつこく絡んできます。養成出身と決めつけると私が嫌がると思って、大げさに芝居がかった態度でした。

 そこで、私もわざとらしく「あなたは、どこの養成出身ですか?」と返したら「俺が養成出身なわけないだろう!」と、そのオジサンはキレ気味でした。

 その後、今度は、そのオジサンが、「S県の診断士協会に来なよ」「何もできない新人でも年150万くらいは、公的支援業務回すからさ~」と、しきりにS県の協会入りを勧めるのです。

 こちらを無能と決めつけた上に自分の権力を誇示し「仕事を恵んでやるから、俺にひれ伏せ」的なメッセージを感じました。

「なんで公金を自分の金みたいに語っているのか?」と呆れましたが、口には出さず「自分でなんとかします」と、お断りしました。

 上にやられた鬱憤を、下をいじめて晴らすという、昭和の体育会系のノリですが、こういうのは部活や会社の序列内でのみ成立する行為であって、序列外の他人にしたら反撃されるリスクがあるにも関わらず、いい年して初対面の新人をトイレまで追いかけてきて嫌がらせするメンタリティに、さすがに気色悪かったです。

 このオジサンが生きて来た世界が想像できる感じがしましたが、その意思決定レベルでは、「顧客が100%自腹で報酬を支払うコンサルは一生無理だな」と感じる一方で、セミナー講師や公的支援では、こんなレベルの人も登場してしまう現実に、複雑な気分になりました。

 

中小企業診断士同士のマウンティングが多い理由

人間は、群れないと生きられない生き物ですし、その中で序列上位の方が生存や子孫を残すのに優位になるはずで、そうやって生き残ってきた私たちには、本能的に序列上位になりたい欲求があります。

 マウンティング「する側」は気分が良く、「される側」は面白くないのは、その欲求から来ています。

 通常のサラリーマン生活では、既に序列が確立し、序列確認行為も、役職や席順、言葉使いなどの日常に組み込まれているので、序列確認のためのマウンティングをする必要が、あまりありません。

 マウンティングは、同列的な人間が遭遇した時に、激しくなると予測できます。

 中小企業診断士同士でマウンティングが多くなる理由としては、中小企業診断士のボリュームゾーンが、中高年、高学歴、大企業勤務者が多く、序列意識が激しい人が多い点と、中小企業診断士という共通項だけで、年齢、職業などが多様な人材が、同列的な立場で、集まる場が生まれてしまう点にあります。

 そりゃ普段、大企業で威張っている部長は、30代くらいの新人を青二才扱いしたくもなります。

 また、独立している人も、公的支援を巡るナワバリ競争に勝つために、大体がグループを作っています。

 利益をグループ内に配分するには、やはり序列が必要になり、そこでもマウンティングが起こりがちです。

 中小企業診断士にマウンティングが多いのは、このような構造的な理由であり、中小企業診断士に特別に性格が悪い人が多いためではありません(笑)。

 

マウンティングへの対応方法

個人的に、ビジネスで一番重要な能力は「観察力」だと思っています。

 マウンティングには、何らかの意図が隠れているもので、観察力を磨くためにも、価値のある情報を掴むためにも重要ですし、何より、面白いものです。

 例としては、学歴や所属企業や役職等のステータスアピール、有名人と知り合いアピール、独立している人でも、年収自慢、社会貢献をやたら主張する人、いろいろありますが、その中からその人のコンプレックスや価値観が見えてくると思います。

 おじさん同士のステータス自慢合戦みたい場面も「舐められたら終わり」的な社会で生きて来ている感が漂っていて面白いですね。

 最近は、相手の自慢話に「マウンティングされた」と怒る人が多いようですが、本当は、相手が望むような反応をしてあげた方が、双方にとって良いと思います。

 マウンティングで、気を付ける必要があるのは、「相手に悪意」または「実害」があるケースです。

 自慢話だけなら、それほど気を付けなくても大丈夫なのですが、相手がこちらを否定したり、馬鹿にしたり、レッテルを貼ってくるような時には、注意が必要です。

 例として、新人が「診断士グループ」に加入しようとする場合に、「親切な先輩・良い兄貴」的な雰囲気を漂わせつつも、上から目線で、こちらを経験不足、未熟、無能的なレッテルを貼りつけてくることがあります。

 それを受け入れると、相手の横柄さや理不尽な要求がエスカレートするケースです。

 これは、都合のよい駒になるか「踏み絵」をしていると考えられます。

 つまり、「従属するか」or「コミュニティから出ていくか」の究極の二択を相手に押し付けているのです。

 ブラック企業の新人研修みたいなものです。

 従属した場合、「修行」と称して、無料奉仕させられる可能性が大です

 (※数年凌げば、おいしい仕事も回してもらえる可能性も、ゼロではないですが)

 以上のように、相手を下げてくるマウンティングは、悪意を持って、わざとやっています。

 こういうタイプは、長年、立場を利用して、理不尽や無理を強要してきているので、罪悪感もなく、むしろ「新人なら、当たり前」、「美しい日本の伝統文化」くらいに思っています。

 ここで、もし相手を論破すると、逆恨みされ、今度は、悪い噂などをばら撒いたりされがちなので気を付けましょう。

 

おわりに

 マウンティングは、相手の感じ方次第なので、難しい問題だと思います。

 私も独立した頃の自己紹介として、「大手の技術コンサル出身」「国の研究機関にもいました」「中小企業診断士と技術士を持っています」とやっていたので、「マウンティングされた」と感じた人も結構いたのではないかと思います。

 個人的にも、独立したら、プロのキレッキレのコンサルタントと関われると思っていたら、現実は、マウンティングやレッテル貼りが多いことに多少の失望はありました。

 でも、人間なんて、どこも大して変わらないとつくづく思いましたし、このレベルでも独立して食べていけるという事実に、自分が独立して食べていける希望が持てました。

 また、こうしたマウンティングは、なにかに従属しないと生きていけない人達の間で繰り広げられるものです。

 「争うな、別の世界で勝負しろ」というプロコン塾の先生の助言の通り、主体的に動く人の世界には、そういう人はほぼいません。

 序列の世界が嫌な人は、主体的に行動するしかないみたいです。

 ご参考になれば幸いです。