人生の進路・結論を先送りすることは「モラトリアム」と呼ばれたりしますが、日本社会の場合は、大学生活が「モラトリアム期間」に該当しており、就職活動結果により将来の人生コースが、決まることが一般的です。
モラトリアム期間において、「先見の明がある人」がやれることは「将来の選択肢を増やす」ことで、いろいろな社会勉強や学業、汎用性の高い資格を取得することが挙げられます。
モラトリアム期間は、自由度も充実度も高く、根拠ない将来期待にあふれていて、人生の中で最も楽しい時期と言えると思います。
日本社会で残念に思う点は、社会人になって以降のモラトリアムが難しい点にあります。
20代前半に、自分の将来目標を確定できる人は、少数派だと思います。
将来目標が決まっていない状況で、なるべく良い会社に就職し、そこでの運命を受け入れるサラリーマン人生は、夢に欠ける感じがしてしまいます。
そこで、少しでもモラトリアム期間を延ばす意図で「とりあえずコンサルタントに就職する」という層が増えているそうです。
一生、勤めるつもりはないけど、将来の選択肢を増やす方向の活動をしておく戦略です。
中小企業診断士取得も、同じように「大人のモラトリアム」向きな資格と言えます。
中小企業診断士の取得により将来の職業選択の幅は広がりますし、就職以外にも独立や起業といった活動にも役に立ちます。
弁護士や会計士や税理士は、独占業務がある上に、認知度もステータスも上ではありますが、将来の職業選択範囲が限定されてしまう点では、診断士に比べてモラトリアム向きではないと思います。
※大人になってから挑戦する難易度もリスクも高過ぎです。
ビジネスマンの中小企業診断士人気も、現状の閉塞感からの、モラトリアムが理由の人が多いと思います。
私の場合も、30代前半から無職になって診断士勉強を始めたのですが、将来目標は「面白い人生を歩む」だけで、特に明確な目標はありませんでした。
典型的な「モラトリアムおじさん」だったと思います。
その後、30代前半から10年くらいは、ずっとモラトリアム期間で、無職勉強(2年半)→就職(2年半)→合格→即独立という感じで、ふらふらしていました。
独立時も「3年頑張れば、食えるようになる」という自信だけで、明確な目標はなかったです。
そして、この30代~40代の大人のモラトリアム期間が、とにかく楽しかったのです。
普通、この年代の人は、仕事などで忙しいと思いますが、自分のために自分の時間をフルに使えたことは、本当に幸運でした。
30代以降にモラトリアムを楽しむための必要条件を、経験者から言わせてもらうと、以下の要素を満たすことが重要だと思います。
- 経済的に自立していること
- 表向きの肩書を作っておくこと
- モラトリアム期間中、自分の人材価値向上を実感できること
30代以上のモラトリアムは、一般の道徳的価値観とは反しており、また自己投資の概念を理解できない人が多数派です。
もしモラトリアム期間に、誰か(親など)に経済的に依存していたり、肩書が「無職」だと、周りから干渉されたり、馬鹿にされたりすることが多く、楽しめないでしょう。
そのため、経済的に自立し、自己責任で行動していること、さらに、養成課程(大学院)通学とか、資格取得後は「中小企業診断士事務所 代表」など、対外的に語れる肩書を作っておいた方がよいです。
また、モラトリアム期間を通じても自己成長できる環境に身を置き、自分の人材価値が向上していることが実感できていれば、不安の軽減と、充実感のもとになります。
中小企業診断士のモラトリアムの活用方法としては、一次試験合格者であれば「養成課程」、独立後であれば副業や転職、独立などが考えられます。
中小企業診断士は、ネット上では、転職や独立時の価値が過小評価される傾向があります。
世の中には、ちょっと自己啓発して、管理職経験があるだけで「経営の専門家」気分の人はたくさんいますが、実際は、診断士レベルの経営知識をもった人材は、ほとんどいません。
そして、まともな経営ができれば、大きく伸びる会社やビジネスは、無数に存在しています。
つまり、潜在的に活躍できる場は、たくさん存在しているのです。
中高年のモラトリアムの目的は、自分の天職を見つける活動だと思います。
中小企業診断士としてモラトリアム(天職探し)とは、副業、転職、独立などの活動を通じて、自分が活躍できて、価値を提供して報酬を得られる場所(天職)を探す期間と言えるでしょう。
副業、転職、独立の中で、どれがお勧めかと言われれば、自分なら、自由度と機動力(腰の軽さ)が高い「独立」を選びますが、好きな方法をやればよいと思います。
※具体的な将来計画がなくても独立できる士業は、診断士だけな気がしますね
いずれにしても、長い人生の中で、30代以降でモラトリアム期間を持てることは、とても贅沢なことです。
現状の閉そく感で苦しんでいる人は、別に具体的な目標や計画がなくても、とりあえず中小企業診断士を取得して、モラトリアム期間に突入する人生も面白いと思います。
※あくまで自己責任で、私は責任持ちません(笑)
