自腹で、養成課程に進む人は、どうしても二次試験に合格できない人、あるいは、短期で確実に中小企業診断士になるために、養成課程を選択する人が多いと思います。
現在進行形で、養成課程に進むか迷っている人も多いと思います。
養成課程を利用して、中小企業診断士取得を検討している人のために、留意しておかなければならない点を、あくまで私見に基づき述べてみようかと思います。
業界内での養成課程の評価
中小企業診断士業界内の評価ですが、個人的な見聞きした範囲の話ですが、一段下に見られてしまう場合が多いと思います。
具体例を挙げるのは、エグイと思うので控えますが、簡単に言えば「レベル低い」的発言をいくつか聞きました。
支援機関の職員からも聞いたことがあります。
また、養成課程出身者は、診断士の中では、恥ずかしそうにしている人も多いです。
どうしても合格直後などは、「合格までに何年かかったか?」「どこの予備校を利用したか」みたいな話題が出がちです。
その時に、不快な思いをすることもあると思います。
私的な養成課程の能力評価
ずいぶん昔ですが、某養成機関で、実務実習講師のサブの仕事をいただいたことがあります。
その時の感想を述べさせていただきますと、メンバー構成は金融機関からの出向者が3分の1、後は、大手企業の定年・早期退職組と、30代くらいの若手の人と言った感じでした。
実務実習のワークのレベルは、正直言って、試験合格者と比べて低く感じました。
試験組の実務実習は、受ける側しか経験がないので、指導側から見るとまた違うかもしれません。
いわゆる診断ワーク的なことをやり込んでいる二次試験合格者と、レベルに差があっても仕方がないと思います。
多くの人は、ワークの能力の差はともかく、根本的な能力は、あまり差はないと思います。
ただ、数人に一人くらいヤバいレベルの人がいるのは気になりました。ほぼ全員卒業と聞いていたので、どこかで診断士になっていると思います。
こういう人が、養成出身者の評価を下げている要因なのかもしれません。
過去に実際、ヤバいレベルの診断士と少し関わったことがありますが、その人は、診断士グループに所属して、経営相談窓口や、補助金支援、母校の養成課程の大学院で講師をして、なんとか食べていけると言っていたので、案外、何とかなるものらしいです。
診断士って素晴らしい。
独立する人の留意点
養成課程の出身者は、資格取得直後、あるいは独立当初に、不快な思いをする可能性はあると思います。また、仕事面でも公的機関からは多少の不利があるかもしれません。
ただ、数年もすれば、その影響はほとんどなくなるでしょう。
独立してみると、いろいろなマウンティングに晒されます。特に30代、40代など若くして独立した人は、ターゲットになりやすいです。
診断士の世界には「年功序列の終身雇用の有名企業で定年まで働いて管理職でした」「最後は関連子会社の社長でした」みたいな人達がたくさんいます。
中には、競争社会で勝ち抜いたステータス感があって、マウンティングしたい人達もいます。
そういう人達の価値観から見れば、30代など青二才、中途退職者は負け犬くらいに思っています。
マウンティングの例では、独立前の勤務先、役職や学歴など様々です。養成出身者は、たまたまそれがネタにされるだけでのことです。
こういうことに、いちいち反応したり、怒っちゃう人は、独立には向かないと思います。
少しでも不快な思いをすると、音信不通になる人がいますが、もったいないです。
自分でリスクを負ってビジネスレベルで動きたかったら、見栄やステータスへのこだわりは捨てるべきでしょう。
見栄や虚栄心は、判断を誤る元凶です。
別にマウンティングされても、逆におだてられても、自分自身の価値は変わらないのです。人間観察、あるいは相手がいい気持ちになってくれるなら、それで結構と思っていればよいのです。
また、同業者同士の情報収集においては、侮られることは、プラスになることが多いということは覚えておきましょう。
養成課程を選択する戦略の妥当性
養成課程を選択する戦略の妥当性が特に高いケースがいくつかあります。
まずは、中小企業診断士合格後すぐに独立するつもりの人です。
例えば、「二次試験合格に4年かかってしまった場合」と、「養成にいって即独立した場合の4年後」の比較をすると、試験合格者は独立直後、一方、養成課程に行った人は独立3年目の終盤、という状況にあります。
つまり、養成課程後は独立して丸3年の経験を積むことが出来ているわけです。
独立すると実践と勉強、朝から晩までそれだけです。後からいくらでも勉強はやれます。机上の勉強のみよりはるかに成長します。
独立当初、診断実務のワークレベルが多少低かったとしても、独立後3年で、次元の違うレベルに進歩する可能性も十分あると思います。
独立希望で、短期で二次試験に合格する自信がない人は、養成課程を利用し、早く現場にでることに合理性があります。
次に、中小企業診断士取得後に転職しようと思っている人です。
養成課程にもいろいろありますが、中小企業大学校なら、6か月、朝から晩(深夜?)まで毎日みっちりやって、中小企業診断士を取得できます。
せっかく転職するのなら、その機会に、半年くらいの間を入れて学校に通うのもよいと思います。
前歴もそれぞれ、年代も20代から60代までの人が混ざって同級生として、半年みっちり勉強するのは、良い経験になると思います。
転職において職歴の空白を気にする人もいるかもしれませんが、その間、養成課程に通って勉強していたのであれば、立派な理由になります。
個人的には、プロ人材というのは、自分でリスクを負って、キャリアを求めて転職や独立など挑戦を繰り返していくものであって、年功序列、終身雇用という制度とは相いれないと考えています。
新たなキャリア(挑戦)の前に、専門性を強化したり、新たな能力を身につけたりして、プロとしてパワーアップし続ける人生を送ることが楽しいと思うのです。
プロ志向で生きたい人が、転職の間に、養成課程のような自己投資期間を挟むことは、絶対に損にならないと思います。
できれば、次を決めないで辞めた方がよいと思います。勇気がいると思いますが、学校に通う半年の間に、いろいろな人物と知り合い、新たな価値観に触れて、心境に変化があるかもしれません。
卒業してから、進路を決めてもよいと思います。
私の場合は、30代半ばに2年以上無職で、独学で診断士の勉強をしましたが、最高に楽しかったです。
もう一つは、大学生で在学中に一次試験合格した人です。
在学中に一次試験に合格した人で在学中に二次試験に合格できれば、それがベストですが、合格できなかった場合、
多くは、会社に新卒入社しながら二次試験に挑戦することになります。
新卒入社の最初の3年くらいは、覚えることも多く、まずは、自分の職務および、その会社のビジネスを徹底的に勉強してそれなりのレベルになることが重要だと思います。
仕事を覚えるべき新人時代に、診断士の勉強をしていたら、社内の上司や先輩から必ず足を引っ張られると思います。
その場合、どっちつかずで、社内で低評価、診断士取得も諦める羽目になる可能性もあり得ます。
養成課程でも経営修士(MBA)と中小企業診断士を1年で同時取得できるコースもあります。
せっかく、一次試験に合格しているのなら、就職を1年延ばして、養成課程で、中小企業診断士とMBAを同時取得してしまった方がよいと思います。
まずは、養成課程に全力投入し中小企業診断士になって、その後、実践として会社で全力投入するような各個撃破戦略が理想です。
就職活動も、最初から、経営マネジメントが生かせるような仕事を目指すのもよいかと思います。
支援機関や政府金融、地銀などが考えられますが、コンサル会社、中小企業向けの投資ファンドや、持ち株会社などに入社できれば、本格的な経営管理を最初から仕事にできる可能性もあります。
※一次試験を在学中に突破するのは、難しくないと思います。案外、就活の裏技と言えるかもしれません。
最後に、他の士業等で独立している人です。
行政書士、社会保険労務士、税理士、会計士、弁護士など、他の士業で既に独立している人、既に十分食えるけど、中小企業向けに、もっと活動領域を増やしたい人などには、中小企業診断士はピッタリな資格だと思います。
経済的にも時間的にも余裕がある人は、養成課程を利用して短期で確実に取得するのは合理的な選択だと思います。
以上、養成課程は、経済的にも時間的にも大きな投資になりますが、検討する価値があると思います。
ご参考になれば幸いです。