喰えるか

1.中小企業診断士として独立を考えている人へ

“独立!”、“プロコンサルタント!”甘い響きがありますよね。

現在、企業内診断士であったり、あるいは診断士取得を目指して勉強中で、独立を考えている人は多いと思います。

 

独立診断士のブログを見たり、あるいは知り合いの独立している診断士から、景気のいい話を聞くと皆さん楽しそうに見えます。

 

私の場合も、最初は独立志向はなかったのですが、4年もかけて診断士に合格したこともあり、急に気持ちが大きくなって、勢いで独立してしまいました。

 

会社を辞めてしばらくは惨憺な状況が続き、迷走してきましたが、独立3年目に入り、ようやく足元が見えてきた感じです。

このカテゴリでは、独立の可否をどのように考えるべきか、悲観的な話と希望を持てる話を織り交ぜながら、正直に述べていこうと思います。

 

2.中小企業診断士の独立判断の注意点

まず、注意してほしいことは、「表面的な情報に惑わされるな」ということです。

診断士ブログや書籍、知り合いの診断士の景気の良い話は、話半分だと思いましょう。あるいは、たまたま成功事例を聞いているだけと考えたほうがよいです。

 

診断士ブログや書籍などは、基本的にはマーケティングの一環です。独立している診断士で「仕事がなくて苦しいです」という話をブログに書く人は、あまりいないでしょう。

また、診断士仲間同士でも同様で、自分を大きく見せようとする人は多くても、自虐ネタはあまりないです。

周囲が認める実績がある人は自虐ネタも謙遜に見えますが、そうでない人は足元を見られるだけで、特に若い人は自虐ネタはだめです。

また、独立している診断士でやたら独立を薦めてくる人がいます。

「独立したら仕事たくさん出すよ」といったリップサービスもあり、いざ独立してみると全然仕事を出さない人もいます。

 

「そんなに甘いものではない」ことを肝に銘じて、冷静に独立の可否の判断をすべきです。

 

独立の判断は、「独立した場合」と「独立しない場合」の相対的比較で考えるべきです。

同じ能力を持つ人でも、その人の持つ立場や価値観によって独立の可否は異なってきます。

評価すべき要因を挙げると以下のようなものです。

 

  • 独立に必要な能力があるか
  • 現在の貯蓄額
  • 年齢
  • 現在の勤務先と地位
  • 失敗した場合の再就職できる会社のレベルと地位
  • 生涯収入
  • 家族構成と家族の協力
  • 独立しなかった場合の後悔の度合い(何がやりたいのか)

この辺を一個一個まじめに考えてみるとだいぶ思考がクリアになると思います。

 

以下にそれぞれの考察を述べていきます。

※悲観的な話になりましたが、後で希望の持てる話もでます。

 

3.中小企業診断士の独立に必要な能力とは

よく、中小企業診断士の独立には、診断士+αとなるスペシャリティが必要であると言われます。「スペシャリティ」とは、何でしょうか?

一般には業績や経験、特別な技能や資格を挙げる人が多いと思います。

 

私の場合、診断士以外のスペシャリティとして、技術士や業務経験もそれなりにあったので、「楽勝」と考えていました。

 

しかし、実際は、独立してしばらくは本当に仕事がない状況が続きました。(今だから書きますが)

肩書きとして実績や資格を並べても仕事がもらえるわけではないことを痛感しました。

 

反面、肩書きが多少弱くても、成功を納めている人もいます。

どこでこのような差がつくのでしょうか?

 

独立して、一番身にしみて実感できたことは、「商売すべては価値を提供して報酬を得ている」ということです。「顧客やネットワークに対してどれだけの価値を提供できるか」が独立して成功できる必要な条件です。

これができないと短期的には人的ネットワークにすがって成功できてもその後はジリ貧です。

※当たり前だろ!と思うでしょう。しかし、こうした単純な前提が満たされていないケースが多いものです。

必要なスペシャリティとは、「顧客やネットワークへの価値」であって、経歴や資格は必ずしも必要なものではありません。

なので、多少経歴が弱くても、後から「顧客やネットワークへの価値」を作り出せばよいのです。

 

まとめると、中小企業診断士の独立に必要な能力は以下のものとなるでしょう。

 

「顧客やネットワークに対する価値を生み出すために」

・自分で考えて主体的に行動できるか

・手が動くか(実務・作業できるか)

・やり遂げる覚悟があるのか

 

何か精神論っぽくなりましたが、その気になれば、独立の難易度はそれほど高くないかもしれません。

 

4.中小企業診断士の独立に必要な貯蓄額

中小企業診断士の独立に必要な貯蓄額は、ズバリ「3年間自由に動ける金額」です。

 

なぜ3年間なのかというと、独立して、「顧客への価値」を作り出すために必要な期間だからです。

主な顧客となる中小企業は、支援機関に行けば無料(もしくは格安で)で経営相談や、専門家による支援を受けることができます。知恵とかコンサルティングにわざわざお金を支払う意識が低い人が大部分です。

そのため、顧客がお金を払っても良いと思えるほどの価値を作るために3年間という期間を確保しておく必要があります。

 

独立後、蓄えが日々減っていく状況は、想像以上に精神的に来ます。日々、不安感やあせりを感じてしまいます。

自由に動ける経済的な余裕がないままに、独立してしまうと、下請け的な仕事で、ひたすらチャネルを増やしながらスケジュールを埋めようとしてしまうでしょう。

 

スケジュール一杯に仕事を埋めればサラリーマン時代と同じくらいの収入にはなるかもしれません。しかし、顧客に提供できる価値を創造する暇はなく、また、「先生」と呼ばれて多忙な中にいると、焦りを感じなくなります。

私の場合、独立1年半くらいまではひたすらスケジュールを埋めようとあせって迷走していました。しかし、「下積み」、「経験」は重要ですが、それだけやっていて顧客への価値が生み出せるようにはなりません。

将来を見据えた活動をしないとだめであることを痛感しました。今でも大きな反省点であり、時間を無駄にした感が強いです。

 

もちろん、3年間収入ゼロで作業をしろと言っているのではありません。最初は、どんな仕事も断らず何でもやってみることが必要だと思います。

重要なのは、将来の価値つくりのための確実な時間の確保です。理想としては、月の稼動を10日以内にして、それ以外は、価値作りのための作業として時間を投資することです。年間1000時間くらいは、価値作り(自分の戦略策定と、調査研究やメニュー作り、認知向上活動など)に時間をとりたいところです。

※10日稼動すれば単価2万なら月に20万くらいにはなります。

 

仮に、年間実務1,000時間、価値作り1,000時間で年間労働2,000時間(かなりのんびりした生活ですが)とすると、3年間で、実務3,000時間、価値作り3,000時間です。実務と価値作りそれぞれに、診断士に合格すること以上の時間をかけることになります。

実務経験と価値作りの両輪により飛躍的な進歩があると思いませんか?

 

最悪の事態を想定して、3年位は自由に動ける貯蓄があると、かなり余裕をもって対応できるので、独立により成功する確率はかなり上がります。

 

実際に必要な貯蓄額は、計算式で示せば(月の生活費-(月の稼動日数×単価))×36ヶ月+α(例えば半年分の生活費)などです。かなり安全側で考えてみて下さい。

生活レベルによって独立へのハードルの高さは異なってきます。

また、以前の生活レベルから極端に切り詰めてしまうと、家族等がある場合は長期的には協力が得られにくくなるでしょう。

 

5.中小企業診断士の独立最適年齢とは


独立してから、よく聞いたのは、「40才独立最適年齢」説です。

その理由は、会社である程度の経験を積み(できれば管理職)、なおかつまだ若く将来に活動時間があるというものです。

「40才は若くない」と思う方も多いでしょう。独立している診断士の平均年齢はかなり高いので、40才でも若手になります。

 

独立診断士の年齢よる有利・不利なことを挙げて見ましょう。

 

年齢が若いほど有利なこと

①独立後の活動期間が長い

人間の活動期間を仮に70才までとすると、60才では10年ですが、30才なら40年もあります。それだけ将来への可能性があります。

②気力・体力がある

若い方が、多少の無理がききます。

③下積みの機会が多い

若い方がプライドが少なく下積みも苦になりにくいでしょう。また、下積みの診断士を使う相手側も自分より年下の方が扱いやすいので、機会には恵まれやすいといえます。

 

年齢が若いほど不利なこと

①顧客が自分より年上になることが多い

日本社会は、年齢に対する序列に敏感だと思います。誰もが年下に指導されたくはありません。叩き上げの高齢の経営者は、自分の息子ほどの診断士の言葉に聞く耳を持ちにくいでしょう。

②公的支援機関に参入しにくい

お役所のような組織は、基本的に自主的に事業をしているわけではなく、予算のついた政策を実行しているだけです。

オリジナリティを生かして大成功するというより、公平な税の執行の観点から、きっちり実行することを重視します。

よって、リスク回避的で形式、見栄えが重視されますので、公的支援機関には、経験実績が豊富なベテラン、「元〇〇社の役員」など肩書きやステータスの高い人が喜ばれます。

また、コンサルティングというよりは、人脈やマッチングといった部分に期待する部分も大きいことも、比較的年齢の高い方の方が有利な一因だと思います。

(支援機関によってかなりバラつきがあります。)

 

以上、年齢による有利、不利な点を整理してみました。

ここから分かる通り、若い方が有利な事項は、歳をとっても防ぐことはできませんが、若い人が不利な事項は、回避ができるということです。

例えば、若手経営者をターゲットとするか、または、ITなどに特化すれば、高齢の経営者でも聞く耳をもってくれるかもしれません。

 

よって、年齢の観点では「独立は若いほど有利」といえるでしょう。

 

社会人経験や業務経験をどう評価するのかは一概には言えませんが、サラリーマンの経験はその会社の所属していた部署や個人のキャリアの範囲であり、経営全般に関与している人は少ないでしょう。こうした経験が独立後にどこまで役に立つのか疑問です。

自分の場合、知識や技術が役に立ったというより、業界や組織の実態、商慣行、仕事のやり方など泥臭い部分が一番役に立っていますが、この多くは20代のうちに身につくものです。

 

仮に同一人物が30才で独立した場合と、しなかった場合について、その人が40才になったとき、能力や価値を比較すれば、多くの場合独立した場合の方が大きくなるでしょう。

 

現場改善のような既存の枠組みの範囲内で動くつもりなら、経験があるほうがよいでしょうし、既存の枠組みとは全く違うビジネスを行うつもりなら、過去の経験をそれほど重要ではないでしょう。

現代のような変化の激しい時代に、過去の経験がどこまで役に立つのかは微妙です。少なくとも今後大きな価値を生むのは、新たなビジネスの枠組みに関するものです。

 

また、右肩上がりの時代と違い、経営も停滞し、年齢構成が逆ピラミッドの会社組織では、若手の人は、割を食うばかりのケースも多いと思います。

 

個人的な見解では、社会人経験は、5年~10年あれば十分で、それ以後は独立するならより早い方がよいでしょう。

 

※判断は自己責任で、私は一切の責任を負いません(笑)

 

1.中小企業診断士はお勧めです

中小企業診断士を受験への挑戦動機は、各自いろいろだと思いますが、動機や目的が明確であった方が当然長続きします。

 

ネット掲示板などで見ると、中小企業診断士は低評価なものも見られます。「中小企業診断士を取得しても役に立つのか」、あるいは「中小企業診断士は食えるのか」と半信半疑ながら勉強を続けているとモチベーションも上がりません。

 

ここでは、私は「中小企業診断士はお勧めです」と断言できます。

次にお勧めする理由を整理していきます。

メリットを理解して勉強継続の可否に役立てて頂きたい、できればモチベーションの足しになれば幸いです。

 

4.独立する場合の中小企業診断士のメリット

コンサルタントとして独立する場合は、特に資格は必要ないのですが、コンサルタントというのは、世の中でもっとも怪しい職業と思われているので、よっぽど知名度や実績があるか、あるいは明確なサービスメニュー(セミナーとかコンサルなど)を持っている場合以外は、企業にはほとんど信用してもらえないと思います。

以前に有名企業にいて、そこで活躍していたとしても辞めてしまえば、ただの人です。能力を証明することは難しいのです。

中小企業診断士を持っていれば、都道府県の中小企業支援センターや商工会など公的支援機関の専門家登録できるメリットがあります。登録=業務が保障される訳ではないですが、国家資格+公的機関の専門家であることは社会的信用にはプラスに働きます。

また、診断士会の研究会活動や独立診断士のNPOなどネットワークを通じてノウハウや、仕事を得ることができます。

コンサルタントとして独立する場合には、中小企業診断士は持っていて絶対に損はないです。

※中小企業診断士で独立して喰えるかどうかは、別コーナーでやります。