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ベーシックインカムは実現してしまう件

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 ベーシックインカム制度は、「働かなくても毎月お金が貰える」という夢のある制度で、若者を中心に多くの支持者がある一方、「荒唐無稽」、「お金を貰ったら働かない」「財源的に不可能」という認識を持つ人が大部分でしょう。

 個人的見解では、ベーシックインカムは「荒唐無稽」なものではなく、経済活性化、地方再生、出生率の向上に繋がる効果的な制度だと考えており、今後、10年程度で実現していくのではないかと予想しています。
 
 どうして「経済活性化や地方再生に繋がるの?」あるいは「絶対無理、信じられない」ですか?
 でも多分、今後のフィンテック等の技術の進歩や、テレワーク、ジョブ型雇用、複業、フリーランス化、ギグワークの増加などの労働市場の変化に合わせて、社会保障としてベーシックインカムを導入する方向に世の中は進まざる得ないと考えています。 
 
 今回は、夢のある話として、「ベーシックインカムは実現してしまう件」を説明したいと思います。

日本人の生活・将来不安状況

まず、以下の日本の現状データを見てください。

総世帯数:4885万世帯(2020年)、平均世帯人口:2.4人、総人口1億2,600万人
 世帯年収(中央値):423万円
 年収200万以下の世帯比率:19.9%(972万世帯) 
 貯金ゼロ世帯率 単身:38.0%、二人以上:23.6%
 生活保護世帯数:162万世帯 (1世帯2.4人とすると389万人)

出典:2019年 家計の金融行動に関する世論調査、平成30年度被保護者調査、平成30年国民生活基礎調査の概況

世帯年収中央値(年収423万円)でも、生活は苦しいでしょうし、世帯年収200万以下、貯金ゼロという厳しい生活をしている世帯が2~3割も占めるのです。
一方、生活保護世帯数162万世帯ということは、実態は、需給のハードルが高い状況が見て取れます。(手続き煩雑、審査、時間がかかる等)
  
 また、現状、経済的問題のない世帯でも、ローンや子供の学費、老後の資金等の経済問題を抱え、失業やリストラされたらと考えると将来不安が大きい人が大部分でしょう。
 現代社会の多くの人が、生活・将来不安を抱えているはずです。

日本人の生活・将来不安が大きい原因

1.生活・将来不安が大きい理由

名目GDPの推移を見てみると下記の通りになります。

日本:1988年 3.1兆ドル(95年バブル時5.5兆円)→ 2018年5.0兆ドル バブル以降ゼロ成長
 世界:1988年19兆ドル →  2018年86兆ドル 4倍以上に成長

(IMFデータより)

上記のデータから、下記の疑問が湧き起こります。

        
①なぜ30年間で世界経済規模は4倍以上に成長する一方で、日本は低成長が続いているのか
②なぜ、これほど技術(ITなど)が進歩しているのに日本は低成長なのか
③なぜ、現役世代の多くが親の世代より貧困を感じ、生活・将来不安を抱えているのか

 世界経済と急速な発展とは対照的な、長年に続く日本のゼロ成長、国際競争に負け続ける状況で、さらに少子高齢化が急速に進み、財政余力が減少している状況から、不安が大きくなるのも仕方がないことです。

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2.日本の低成長の原因

  技術は進歩しているのに成長しない謎(①~③の疑問)の答えとして、「日本社会で挑戦する人が少ない」からではないかと感じています。
 組織を飛び出して社会を変える挑戦をする人が少ない状況では、社会が進歩・成長することができません。

これまで、多くの30代、40代の有能な人材が「リスクがあるから」という理由で、やりたいことへの挑戦を諦めて、嫌々ながら組織に依存して生きることを選択する場面に多く遭遇しています。

※会社への貢献意欲持つ日本人は数%、世界最低レベル(139ヵ国中132位)

※日本人の幸福度は156か国中62位(2020年) 

年齢と共に低下、40代後半が最低

「日本人,貢献意欲」で検索

 日本的組織の大部分は、年功序列の終身雇用です。経営意思決定層の多くは、高齢で、自分でリスクを負った経験もなく、ずっと社内で過ごして出世した人達で構成されています。
 表向き会社に忠誠を示していても、会社への貢献意欲を持った人は、実際は数%です。
 大部分が貢献意欲もなく保身と現状維持を願う人達で構成されていては、自己変革できる組織はほとんどないでしょう。

3.なぜ挑戦する人が少ないのか

  日本の「有能な人材ほど挑戦しない」理由は下記になります。

①やり直しが利かない社会構造

  日本社会は、年功序列の終身雇用のメンバーシップ型雇用であり、先輩が偉く、マネジメント層を外部から獲得する文化もありません。ジョブ型雇用に、時代は変わりつつあるものの、またまだ人材の流動性は低く、普通のサラリーマンには、よい求人は狭き門です。
組織をドロップアウトして転職しても組織最下層からのゼロスタート、所得も大幅ダウンする恐怖があります。

②社会のセーフティネットが不備

  失業手当は有期限、生活保護は狭き門です。また、現実の世界で、正規雇用につけず貧困に喘ぐ人達や、ホームレスなどのセーフティネットから漏れた人達を常日頃、目撃しています。

 やり直しが利かず、セーフティネットが不備なら30代、40代で家族持ちの起業や転職には非常な恐怖感が伴うでしょう。
 なぜ、挑戦できないのか、その理由は、道の先に「お花畑」があるかもしれないと思っても、その道は、一度、踏み出せば戻れない、転落したら這い上がれないかもしれない危険な道で、命綱もないからです。
 そして、誰も踏み出さず、日本社会がダメダメになっていっているのが現状です。
 ベーシックインカムは、社会のセーフティネットとして「決して切れない命綱」になり得るものであり、「挑戦できる社会」に繋がる可能性を持っています。 次に具体的な妥当性の評価に続きます。

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ベーシックインカム論の妥当性評価

 以下の3つの観点で評価します。

  • 長期的な視点で、メリット、デメリットを比較
  • 公共事情の他の手法との比較
  • 海外での実証実験等の考察

1.ベーシックインカムのメリット・デメリットの評価 


 (1)ベーシックインカムのデメリット

懸念される中で一番多いのが、「お金を貰ってしまったら働かない」、「社会が滅茶苦茶になる」という意見です。
 個人的には、この懸念は、十分に考えられると思います。
ベーシックインカム論でよくあるのが、国(行政)のセーフティネット(医療保険、社会保障制度、教育等)をやめて、代わりに現金で支給するという考えががあります。お金で渡して、後は自己責任という発想です。
 その場合、一人月10万円などの金額が出て来ます。
 この金額では、例えば「5人家族」または「5人の集団生活」で月50万円にもなります。すると、モラルもなく遊興にふける退廃的な層が出て来ると思います。納税側で貢献することもなく、社会インフラにフリーライドする層が増大すれば、税収が減少し、納税者の負担は増えることになります。
その場合、深刻な社会分断や、治安の悪化等の社会問題が引き起こされるでしょう。

このような極論的なベーシックインカム論は、論外だと思いますし、実現性はないでしょう。
 生活できてしまう金額レベルのベーシックインカムは、妥当性がありません。
ベーシックインカムのデメリットが生じるか否かは、「支給金額」の問題なのです。支給金額が大きいほど、財源を確保するために他の社会サービスを縮小せざるを得ませんし、納税・労働を放棄する層が増えます。
 ベーシックインカムで妥当性のある金額は、上記の大きなデメリットが生じない範囲、生命維持の最低限レベルのセーフティネットとして、金額にして月1万~3万円くらい最大限5万円程度の範囲と推測します。
 

(2)ベーシックインカムのメリット

 労働放棄等の大きなデメリットが生じないレベル、「一人月3万円支給のベーシックインカムを導入したケース」を想定してメリットを以下に考えてみます。
 

①国民の生活・将来不安が大きく減少する(決して漏れないセーフティネット、命綱になる)

単身者支給額は、月3万円、年間36万円、10年で360万円、20年で720万円になります。
 5人家族で月15万円、年間180万円、10年で1800万円、20年で3600万円の支給受取額になります。
月3万の支給でも、これだけの所得増の効果があります。
予期せぬ事態で給与等の収入ゼロになっても、路頭に迷う可能性は低くなり生活・将来不安が、かなり軽減するでしょう。

②生活のための労働が減少し、自己実現のための労働が増える

ベーシックインカムにより生活不安が減少することで、低生産性のブラック企業にしがみつく動機が減少します。
企業では、労働者を大切にしないと従業員を集められない状況が生まれ、産業構造全体の変化に繋がります(高付加価値産業への移行、企業のホワイト化)。さらに、国民の時間・経済的余裕が増える分、将来の利益増大への自己投資的な活動も増加し、労働者の質が上昇していきます。(労働者の高付加価値化)

③生活不安が減少することで挑戦する人が増える(社会・経済の発展に繋がる)

    転落の危険がある場所に行くときに、命綱があれば安心して挑戦できるでしょう。
 例えば、5人世帯で月15万円のベーシックインカムがあれば、これまで組織に依存せざる得なかった、気力・体力十分な、30代40代の家族持ち世代の転職や起業独立が増えます。その中には、地方を拠点に何かに挑戦する人も数多くいるでしょう。
 起業、転職、地方移住等の人材の流動性が向上し、適材適所が推進され、幸福度が増大します。
挑戦する人が増えることで、日本経済および地方の活性化、発展に繋がります。

④出生率の増大、少子化対策になる

経済的な理由により、結婚や出産を思いとどまる人が減少します。
 現状、低所得層(男性)の未婚率は極端に高く、深刻です。

一人月3万のベーシックインカム導入で、低所得層(年収200万)同士の夫婦共働き(子供3人)の場合、
世帯の総収入は580万円になり、十分に生活が可能になります。
※年間総収入580万:世帯所得400万(年収200万×2人)+180万(5人分のベーシックインカム)

※配偶者控除等はベーシックインカムに一本化され女性の社会進出が進むはずです。

⑤社会保障から漏れた人を救うことができる

ホームレス(路上・車上生活、ネットカフェ難民等)や住所不定無職者等の社会保障から漏れた人達は、実際に何万人存在するのか誰も分かりません。
※こういう人達は、決して好きでその状態になっているのではありません。
 住所不定でも、国民カードや本人認証(顔、指紋など)ができれば、ベーシックインカムが受け取れるはずです。
 こうした人達に、月3万の収入があれば、現状よりはずっとましな状況になるはずです。

⓺国民の社会貢献意欲が高まる(反社会的な人が減る)

現状、国民は、社会インフラを使い、教育や医療など様々な社会サービスを受けています。それらはすべて税金等で行われています。所得税の納税シェアは諸説ありますが、上位10%所得者が大部分(80%近く)の所得税を負担しています。

一方、平均所得以下層の納税シェアは、少ない(10%代)です。地方税や社会保険についても同様の傾向だと推測します。

しかし、平均所得以下層で、社会サービスの恩恵の実感がない人が多いと思います。逆に自分達は、国や企業に搾取されていると考えている人も多いと思います。貧困や搾取を理由に反社会的な思想、行為を正当化する人達もいます。

現状で困窮し、生活不安も大きい人は、そういう感情になることはある程度仕方がないことかもしれません。

こんな時、一人月3万のベーシックインカムが支給されれば、「国が国民を守っている」強い意志を感じることができるでしょう。
 結果として、反社会的志向は減少し、社会貢献意欲が高まると思います。

以上にメリットを網羅的に挙げてみましたが、一人月3万のベーシックインカム導入により、国民の生活不安や社会不安が軽減し、生活のためにブラック企業に留まる人が減少し、自己投資(資格取得など)が盛んになります。
 結果、有能で気力体力十分な30代40代世代で転職や起業などの挑戦をする人が増えて、経済が活性化し、地方を含む社会全体に活気が増えるでしょう。(今より、挑戦できる社会になります)
 さらに、未婚率が減少し出世率も増えて、少子高齢化対策になるばかりか、消費も活発化します。
 そして、住所不定で、社会保障、セーフティネットから漏れた人達を救うこともできる。
 反社会的な人が減少し、社会貢献意欲が高まる。

良い事尽くめです。

事業の社会的効果というのは、「直接効果」と「間接効果」に分けられますが、ベーシンクインカムは、「絶対に切れない命綱」であり、人々の生活不安を軽減し、「挑戦できる社会」にすることで、少子化、経済効果等に、膨大な間接効果が見込めます。
 一人月3万程度のベーシックインカムのデメリットとメリットを比較した場合、圧倒的にメリットの方が大きいというのが、個人的な見解です。

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2.公共事業としての妥当性(他の公共事業との比較)

次に、ベーシックインカムなんて「単なるバラまき」だ、「行政が公共事業を直接やった方が費用対効果が高い」という意見があります。
 公共事業の中でも、社会保障(健康保険、年金)、インフラ、義務教育、警察、国防など、行政でなければやれないことがあります。
 これらは国民の命、安全安心を守る根幹であり、本来の行政の仕事です。この部分を縮小してベーシックインカムに回すことはナンセンスです。
 上記の国民の命に係わる部分以外の公共事業、経済振興策、企業支援、地域振興などの各事業、補助金、助成金などを含めて、費用対効果的に、ベーシックインカム制度と対比できるでしょう。
 また、現状の貧困層対策においては、手続きに時間も手間も大きく、さらに住所不定者で路頭に迷いセーフティネットの網から零れ落ちた人もおり、仕組み的に不備があります。
 現実問題として、ホームレスや、飢えて死ぬ人も現代社会には存在していることがその証です。

国民すべてに、決して切れない命網(セーフティネット)を整備することは「国は、何があっても国民を路頭に迷わせないから、思い切って挑戦して下さい」というメッセージであり、挑戦できる社会に繋がるはずです。
 また、所得の再配分対策として、行政の諸手続きや審査を挟まないで国民に配分することは、事務コストが掛からず大変効率的です。※フィンテックにより技術的に可能になっています。
 長期的に見て、ベーシックインカムが、他の公共事業に対して費用対効果的に劣ることはないと思います。

※間接効果を含めた長期的な検証が必要だと思います。

3.海外でのベーシックインカム実証実験について

アメリカの都市、フィンランド等での実証実験等が行われていますが、その結果を見ると、「不安・ストレスが大きく軽減した」「働かなくなる人はそれほど多くなかった」といった感じで、効果、デメリットともに曖昧な感じがします。
 公共事業として強い社会的意義が感じられるような結果ではないです。
 海外での実証実験の結果から「ベーシックインカムは意味がない」という意見もあるでしょう。
 

 これら実証実験の基礎諸元は、任意の対象者、有期限(2年等)、限定された範囲(都市、あるいは小国)、金額(日本円で6~10数万円)となっています。
 このような実証実験では、事業の効果として「不安やストレス軽減」程度の直接効果しか計測できないでしょう。

 ベーシックインカムの意義は、「生活不安を軽減し、やりたいことに挑戦できる社会」にすることで、経済・地域発展、出世率向上等の大きな間接効果が見込めることです。
 そのため、永続的で決して切れない命綱でなければないものであり、対象者、期限、範囲等が限定された実験では、正しい効果を検証できません。 
 例えば、2年間だけ、毎月10万円支給しますと言われて、安定した職を辞めて、挑戦する人は増えないでしょうし、経済的な理由で結婚できない人が結婚できたり、出産を思いとどまる人が「もう一人子供を作ろうか?」となるとは考えにくいです。

 分析や実験は大切ですが、大きな仮説を元に、政治的判断で実行すべきものであると思います。
 正しい効果を検証するには、まずは毎月5000円等で導入し、金額を増やしたりしながら、長期的に検証すべきでしょう。
 現状の児童手当の社会的意義に不満がある人はほとんどないでしょう。
それを、国民への命綱として、国民手当として対象範囲拡大することに、大きな社会的意義があると思いませんか?

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財源的可能性の検証


 ベーシックインカムを語る時に、必ず出て来るのが「財源はどうするんだ」問題です。そこで、ベーシックインカム導入が財源的に可能か検証してみます。

1.ベーシックインカム導入に必要な年間予算額

一人当たりの月の支給額と、必要な年間予算額が下記の通りとなります。

毎月1万円(年12万):9.8兆円

毎月2万円(年24万):19.5兆円

毎月3万円(年36万):29.3兆円

毎月5万円(年60万):48.8兆円

必要予算額の計算式:支給対象者数(8,134万人)×年間支給金額

支給対象者数:総人口(1億2,600万人) -公的年金受給者(4,077万人)-生活保護受給世帯人口(389万人)=8,134万人

※実際は全国民に一階部分としてベーシックインカムを支給し、公的年金と生活保護受給者は、ベーシックインカム需給分の年金等受取額が減少する運用になるはずです。財政の可能性を検証するため便宜上、控除して計算します。(全体の収支は合います)

毎月1万円の支給が予算10兆円で可能であれば、導入できそうな気がしませんか?

2.財源可能性の基礎データ

日本の基礎データを下記に整理します。

実質GDP:535兆円(2019年)

地下経済規模:60兆円(税収換算17兆円)諸説あり

総財政支出:約231兆円(国と地方財政合計)

国の総支出:151兆円(一般会計と特別会計の合計(重複、国債償還除く)h30予算)

地方財政総支出:80兆円(地方交付金除く)

国の労働力人口:5,660万人(内、非正規2,165万)、フリーランス人口(300~1200万)諸説あり

公務員数:332万人(国58万人、地方274万人)

上記の基礎データから財源の可能性を探ることになります。
 考察すると、公的な財政総支出は日本のGDPの半分近くあり、従って国の労働人口の半分近くは、財源は税金である公的事業に関する仕事を行っている可能性があるということです。

また、財源に関する議論で必ず「公務員の給与一律カットすれば足りる論」が出て来ますが、公務員総数332万人、人件費総額は、福利厚生を見ても最大限30兆円程度、仮に一律10%人件費カットしても財源3兆円確保に過ぎず、総支出230兆円の1.3%です。反対の大きさや、モラル・モチベーションの低下を考えると、ナンセンスと言えそうです。

予めその論は、除外します。

3.財源可能性候補

  財源可能性としては、「税収増によるもの」、「効率化により生み出すもの」、「事業の縮小、統廃合により生み出すもの」の3パターンに分けられます。

(1)税収増による財源候補(財源可能性:21兆円)

①所得税控除、児童手当の見直し  5.6兆円

一律でベーシックインカム(国民手当)を国民に支給することで、所得税控除(基礎、扶養、配偶者控除等)、児童手当等を見直し、ベーシックインカムに一本化が可能です。
 配偶者控除等を見直し、国民手当で支給すれば「働くほど得する社会」になり女性の社会進出が進みます。
 徴税のシンプル化(コスト削減)、単身者との税負担の公正化にもつながります。

控除見直しの税収増効果は資料がなし、年金・生活保護受給者を除いた人口8000万人×5万円と想定すると、4兆円くらい? 児童手当1.6兆円、合計で5.6兆円くらいと想定

②消費増税(5%) 10兆円

消費税1%で約2兆円の税収増効果、5%増税時、10兆円の増収
 

③地下経済の税収化 5.7兆円

地下経済規模:60兆円(税収換算17兆円)諸説あり、実態は誰にも分からない

※必ずしも非合法ではない租税回避地等の利用を含む
 法人、国民番号と全口座との紐づけ、フィンテック技術を活用し、全体のお金の流れの見える化などにより実体経済化
 17兆円の1/3を税収化したとして5.7兆円

税収増可能性 総合計:21.3兆円→21兆円
 

(2)運営効率化による財源確保(財源可能性:20兆円)

 行政等の運営効率化というと、「民間の仕事は大変なんだ」「公務員はもっと働け」などと言う人が必ず出て来ます。ここでの議論は、国と地方の総財政支出230兆円の運営を効果は落とさず、効率化(コスト削減)して、財源確保をすることが目標です。

230兆円は、GDPの半分近くに及び、支出は、全国の民間企業や個人に行き渡ることなります。
 財源を確保するには、行政内のみの話にとどまらず、公的事業の受注者である民間企業を含めた全産業レベルでの運営の効率化が必要になります。

具体的には、行政、民間企業を含む全産業のジョブ型雇用への転換、RPA(AIによる業務自動化)の導入、テレワークの推進、ギグワーク、フリーランスの活用、人材流動性の向上などが必要になります。
 
 さらに、電子政府・手続きオンライン化、国民カード(顔、指紋認証)による年金、健康保険、運転免許、銀行通帳等の統合が必要になるでしょう。
 日本人一人当たりの労働生産性は、アメリカの61%、ドイツの77%(2018データ)しかありません。まだまだ効率化の余地があるはずです。
 財源可能性:総支出230兆円の10%で23兆円 →20兆円と仮定

(3)事業の縮小統廃合によるもの(財源可能性:4兆円)

国の総支出151兆円の内、社会保障、防衛、教育、公共事業などの国民の安全・安心のため削減不可能な部分を除いた部分は、43.9兆円です。
※内訳:地方交付金19.1兆円、その他24.8兆円(補助金、給付金特別会計および財投12.6兆円)h29
 これらは、ある程度は、費用対効果等を対比しながら、事業の縮小、統廃合等を行って財源を捻出できる可能性があります。
 財源可能性:43.9兆円の10%として4兆円想定

(4)結論


税収増による財源可能性:21兆円
運営効率化による財源可能性:20兆円
事業の縮小統廃合による財源可能性:4兆円
総合計:45兆円

 ベーシックインカムに必要な予算(以下)と比較すると、支給月額1~3万くらいまでなら、現状の社会保障、防衛、教育、インフラ投資を縮小しなくても、ベーシックインカムの財源確保は、実現可能性があるでしょう。


 毎月1万円(年12万):9.8兆円 (すぐにでもできるはず)
 毎月2万円(年24万):19.5兆円
 毎月3万円(年36万):29.3兆円
 毎月5万円(年60万):48.8兆円(不可能)

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ベーシックインカムを実現させる方法

1.予想される猛烈な反対 

 ベーシックインカムにいくら社会的意義があり、財源的にも実現可能性が高くても、政策として実現するかどうかの話は別です。 
 現状の「ベーシックインカム」は、荒唐無稽なものとして扱われ「財源的に不可能」かつ「働かないでお金を貰うなんてけしからん」といった感情を持つ人が大部分です。
 また、財源可能性候補について実行しようとすれば、各方面から猛烈な反発が起こることは必定です。
 政治家、政党は、国民の支持がなければ存在できませんので、ベーシックインカムのような、大きな反発が予測されることに取り組む、政治家が、現れることは期待できそうもありません。
 だから、現段階では、理論的には可能でも実際は「実現可能性が低い」と言わざるを得ない状況です。

2.時代の流れはベーシンクインカム普及に進む

 世界的にみて、ベーシックインカムが普及していないのは、これまで、支給コスト、時間的な面で「技術的に不可能」だったからでしょう。
 しかし、現在、フィンテック等の技術進歩により、国民と紐づけされた口座があれば、低コストかつ迅速に、国が直接国民に支給することが技術的に可能になってきました。
 新型コロナ時の特別給付での対応の困難さ(時間、コスト的)から、今後、景気対策等で、迅速に支給するためにマイナンバーと口座の紐付け等が進む方向に世の中は進んでいます。
 ※新型コロナの特別給付のように国民に直接支給した実績もできました。
 また、労働市場を見ると、テレワークが普及し、大企業においてもジョブ型雇用への移行が動き始めています。今後は、伝統的雇用体系である年功序列、終身雇用が崩れるばかりでなく、フリーランス人口の増大、複業、ギグワークと言った労働市場も拡大し、社員、雇用といった形の労働者の比率は、ますます減少していくでしょう。
 企業側にとって、年功序列、終身雇用はリスクであり、必要な人材を必要な時だけ使う、「雇用以外の労働市場」は、テレワークにより国境を越えて広がっており、もうこの傾向に歯止めがかかることはありません。
 そのため、失業率さえ低水準に維持して、企業に、雇用および従業員への福利厚生、社会保障を要求する政策は、意味のない時代になるでしょう。
 国が直接国民に対して、社会保障を提供しなければならない時代がきています。
 今後、全世界的に、同様の傾向でベーシックインカムの意義が高まると予測します。

3.実現するための方策

①「ベーシックインカム」→「国民手当」に呼称を変更する

 まず、「ベーシックインカム」という呼び名を止めて、「国民手当」という呼び名にすべきです。
 どうしても、「ベーシックインカム」という響きに、「働かないで暮らせる社会」→「労働を放棄し、退廃的に暮らす人達が大勢出て来る」といった感じがしてしまいます。
 目標を「働かない暮らせる社会を目指す」ではなく、「決して切れない命綱があるから」「やりたいことに挑戦できる社会を目指す」としなければ、世論の多数の賛同は決して得られないでしょう。
 そのため「働かないで暮らせる社会」というイメージとは決別すべきするために、「国民手当」という呼称に変えた方がよいです。

②国の事業として行うこと

 社会保障を、地方自治体に押し付ける形になりがちです。
 このやり方では、絶対に成功しないでしょう。
 理由は、地方財政規模は国の半分程度しかありませんし、自治体ごとの財政レベルにもムラがあり(地方ほど不利)になります。さらに首長が交代することで、継続性も危うい状況です。
 また、「住所不定者」等のセーフティネットから漏れる人達が数万(数十万?)単位で出て来るでしょう。
 国・地方分担というやり方も、手続き、仕組みが複雑になり、迅速性もなく配布コストが膨大になるでしょう。
 国と国民が、フィンテックにより直接つながるシンプルな仕組みとするために、必ず、国の事業として行う必要があります。

③まずは毎月5000円の国民手当を目指す

 マイナンバーと口座が紐づけされていれば、毎月5000円の国民手当を支給することは、年間5兆円の予算で出来るはずです。
 通常の景気対策の補正予算で財政出動している規模であり、政治的決断があれば、反発を抑えて実施できる可能性は高いです。
 既に、新型コロナ対応で全国民に10万円(12兆円)特別給付した実績があります。
 今後、景気対策の特別給付は、毎月5000円×12か月(年間6万円)×2年という形で実施されるべきでしょう。
 ※2年間で10兆円の予算(5兆円×2年)で出来ます。
 いずれ電子政府化実現のために国民カード等の導入が必ず必要になります。国民手当の支給は、国民カード導入への世論の合意を形成する方策となるでしょう。

④国民手当の社会的意義の認知と拡大

 有期限(2年)の特別給付による毎月5000万円の国民手当が実現すれば、現状の児童手当のように社会的意義が理解できると思います。
 国民の大多数に、社会的意義の共通認識が出来てくれば、その後は、継続化や財源確保策を進めて手当の規模を拡大していくことになるでしょう。
 長期的に、その効果を検証しながら、10年くらいかけて毎月3万円程度までは拡大できる可能性があります。
※国と地方の総予算の13%(30兆円)で、実現可能です。

 毎月3万円、5人家族で月15万、年間180万、10年で1800万、20年で3600万円です。
 どれほどの生活不安を軽減し社会・地方の活性化に繋がるのか、ご想像にお任せします。

まとめ

①この30年で世界経済は4倍に成長、日本はバブル以降ゼロ成長、世界から相対的に年々衰退中
②多くの現役世代が、親の世代より貧しく、生活・将来不安を抱えている。
③日本が成長できないのは「挑戦する人が少ないから」 有能な人材ほど挑戦しない
④挑戦できないのは、失敗したら「やり直しの利かない社会」、セーフティネット「命綱」が不完全だから
⑤ベーシンクインカムは、切れない「命綱」であり「挑戦できる社会」に繋がる
⑥「挑戦できる社会」になれば、産業の高付加価値化、生産性の向上、経済活性化、地方再生、出世率向上など、長期的には、膨大な社会的効果(間接効果)
⑦ベーシックインカムのデメリットは「金額」が大きくなると生じる(労働放棄、財源的困難さ)
⑧命綱としてのベーシックインカム(国民手当):月1万円(10兆円)、月3万(30兆円)で可能
⑨月3万支給でも膨大な効果:5人世帯で月15万、年180万、10年1800万、20年3600万の所得増
⑩財源は、月1~3万程度までは「税収増」、「運営効率化」、「事業の見直し」で確保可
⑪現状の社会保障やインフラ、教育、防衛予算等を縮小せずに実施可能
※月3万支給は、国と地方の総予算230兆円の13%(30兆円)
 ※長期的には、経済活性化による税の増収効果でペイできる?
⑫国民手当と呼称を変えて、月5000円から実現すべき(年間予算5兆円)
⑬国の事業として国民に直接給付すべき(配布コスト、迅速性、継続性などの観点)
⑭長期的には月3万円程度を目標とし、実現すれば社会は、大きく良い方に変わる

おわりに

 このコラムを書いたきっかけですが、なぜ「IT技術が進歩し世界経済が4倍に成長したこの30年間で、日本だけゼロ成長なのか」、「多くの人が親の世代より貧しいのか」、そして「教育を受けた有能な人材ほど挑戦しないのか」いった疑問に対する回答を考察するためです。
 結論として「生活・将来不安が大きく」「命綱がないから挑戦できない」、「挑戦する人が少ないから社会が進歩しない」という負のスパイラスに陥っているのが現状の社会ではないでしょうか。
 ベーシックインカム(国民手当)という「切れない命綱」を整備することで「挑戦できる社会」に繋がっていくと思います。

 人間の最大の幸福は、「自己実現」だと言われますが、自己実現のために、何歳でも何度でも挑戦できる社会は、幸福度も最大になるはずです。

 併せて、時代の流れとして止められない、テレワーク、ジョブ型雇用や、複業、フリーランス、ギグワークの拡大する社会変化への対応もできて、最終的に、経済発展、地方再生、出生率の向上、ホームレスの激減など、世の中が良い方向に進んでいきます。
 このように、月1~3万円くらいまでのベーシンクインカム(国民手当)は、決して「荒唐無稽」ではなく、社会的に有効なものだという共通認識の醸成に繋がることを期待して、一コンサルタントとしての、社会貢献意欲から当コラムを書かせていただきました。
 
 少しでも社会が良い方向に進む一助となることを願っております。

 ※政治活動に関与しない主義なので、政治関係者、マスコミ等々の当方への接触は、ご遠慮お願いいたします。

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